最近少し知っているワイン通に「俺はワインを混ぜる奴は許せない」と言う事を彼の SNS に書かれてしまったが、まあその気持ちは判る。純粋な気持ち、ピューリタンと言うのは理想を追う若者の特権で私も彼の年代なら二回り近い年長者がそうやっているのを見たら嫌悪感を覚えたと思う。まあ、そういう彼もシャンパーニュには区画(村)、セパージュ、 VT 、赤白(これはシャンパーニュだけだ)、全て混ぜれるという人為的な自由度は全く鑑みてないようだ。
考えてみれば(私も含めて)ワイン通はブルゴーニュに関して温度、全房、樽(新樽率、樽熟期間)、浸漬等の発酵、熟成方法について詳細まで拘る人が多いのに対し、シャンパーニュに関してはせいぜいドザの量やセパージュ、 Viellissement の期間を気にする位かただ単に「美味しい、美味しくない」等の非常に大雑把な感想しか述べないように思う。レゼルブワインに何を使うか、何と何をアッサンブラージュすると言う事は言わばブラックボックスだ。まあ、ワイン会でも大抵開始 30 分前に飲まれてしまうし、それを承知でブランディングに高い値を払う人もいるのでそれはそれで良いのだろう。
ま、件のワイン通のそのブラックボックスはブラックボックスで味わうべきであるという哲学も分からなくはないが、敢えてそのブラックボックスに挑戦するのも一つの考え方だと思う。実際やってみるとそれほど単純なものではなく、ワインを混ぜる、即ちアッサンブラージュだが単に何でも混ぜれば良いと言う訳ではなく、シャンパーニュの性格、混ぜるスティルワインの質、熟成度、両者の相性、割合等、色々なパラメーターが有り、アッサンブラージュにより1+1=3、或いは4みたいな素晴らしい効果をもたらす事も有るし、逆に1+1=0みたいな事も起き、中々奥が深い。最初は逝ってしまったブル白を廃品回収的に少し泡で混ぜてみたのだが最近はこのアッサンブラージュにも幾通りかの定石が有り、それぞれ違う性格(そして質)のシャンパーニュが作れる事が分かってきた。
さて、このパターンは線の細い BdB に良質の HCN の白を足したもの。割合はスープとタレの感じ。良質な HCN や Chablis はマチエールが弱いシャンパーニュとの相性は中々良く Meursault や Puligny を足した時のように決して自分をひけらかさず、シャンパーニュに寄り添う感じだ。多分酒質が近いのだろう。繊細すぎて気弱だったシャンパーニュに芯が出て格段に良くなる。1+1=3とまでは行かないが確実に 2.5 は達成しているだろう。
バブルの頃、ロマコンのピンドン割りというのが流行った事が有った。当時は退廃的、成金的だと思い嫌悪感を覚えたものだが、今、何となく自分もやってみたいような気がする。案外かなり美味しいだろう。
そして少なくとも高価なワインを有り難く頂戴して SNS
にあげるよりもカッコいい気がする。
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