最後の晩餐に何を食べるかというお決まりの質問に対して大抵の人は鮭のおにぎりのようなシンプルな物か、母の味のようなノスタルジックな物を選ぶ傾向があるが、いずれにせよ、豪勢な料理を選ぶ人はあまりいない。まあ、実際問題最後の晩餐に至る局面の人生では味覚機能、どころか消化機能、果ては咀嚼機能の低下に加えて痴呆も進んでいたりして流動食になったりする可能性もあるが、それでも日本人が選ぶ最後の晩餐には豪華な料理では無くそういう情緒に溢れたものやシンプルな物が多いということに何やら諦観染みたものを感じる。
私も段々と最後の晩餐に相応しいワインは何かという事を考えるようになってきた。下山を標榜する盟友ロマネ氏は絢爛豪華な GC や特別な PC の豪華さを瑣末と喝破し、日常を感じさせるワインの中に真の美を見出すべきだという新たな局面に入っているが、私も間も無くそこに到着するだろう。まさしくあれほど素晴らしいブルゴーニュワインを飲んだ Camille Rodier が後年シンプルなワインを好み、魯山人が後年魚の塩焼きのような料理を好んだのと同じだ。歴史的に例えると狩野派に代表される豪華だが物質的な安土時代から無常感、詫び寂びを大切にする桃山時代への移行、これが個人の中で起きているのだろう。
前置きが随分長くなってしまったが、今日はこのワイン。特段変わったところはないのだが非凡の凡の極致のように感じる。抜栓直後は還元的で禁欲で堅い殻の中に閉じこもっていて寡黙。ミネラルが支配的だが、軽くスワーリングするとワインはようやく一言二言、口を開き始める。果実は淡く上品、フィネスを感じる。横への膨らみはなったくなく球体。フィニッシュは長いが縦に切れ何も残さずフェードアウト。素晴らしい日本酒を彷彿とさせる。熟成させた Coche Dury の Bourgogne Blanc (Meursault) に近い、というか Coche Dury 以上に Coche Dury 。
自分的にはこの白が最後の晩餐の1本なのではと思っている。
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