ワインが単なる飲み物を超越する理由はその味わいや値段にも拠るがやはり最終的にはワインは熟成による進化を遂げる謂わば生き物であり、時にはその進化により人智を超えた高みに到達する可能性があると言うことだろう。更に言うとリリースで買って 20 年、 30 年寝かせて自分と共に成長して来たワインは想いで有り、自分の分身だ。そのワインを自分の節目が来た時にその想いが判る人と開ける。
このワイン、 30 年を超え、コルクも切れボロボロになり、殆どソーテルヌと思わせる位の深い黄金色が付いていて、シェリーが出ている事は確実で果たして一口目を含むと微かなシェリーの要素が口から鼻へ抜ける。だが口に含むといがいがした要素はなく、花梨のような丸い果実。酒質は粘性が高く滑らか。口に含むと酸があまり感じられずピークを少し過ぎた頃と思った。ところが 15 分を過ぎた頃からそのシェリー香やトーストが消え、先に述べた花梨を思わせる透明だが複雑な果実が広がり艶かしさまで感じられ、落ちるどころか最後は若さまで感じさせてくれた。逝っていた時に備えて魂召喚用のノンドザのシャンパーニュを用意していたが、全く必要が無かった。 Montrachet は難しい畑で結構駄作は多いがやはりここの Montrachet は別格だと言われる理由を再認識した。
作られてから飲むまでの間の時間が長いのもワインの特徴で有る。ワインが作られてからから開けられるまでそれぞれの人の人生が有り、それぞれの人が楽しい事や辛い事を経験し、そしてワインを開けるこの時、この場所でワインと人が一点に交わる。そしてワインを見ながら人はその間の自分の人生を振り返る。
「お前は歳を取ったが中々のものじゃないか、そう言うわしも歳をとったけど満更捨てた者じゃ無いだろう」とワインに語りかける或るブルゴーニュの作り手の言葉が浮かんできた。
Vosne Romanee Gaudichot 2004 (Forey) 2023/10/30
Saumur Champigny Poyeux 2012 (Clos Roug… 2023/10/28
Puligny Montrachet Pucelle 2018 (Morey-… 2023/10/23
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