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美しい蝶すらも近づいて見ると醜悪であると気づいてからずっと時が経っていたのに内臓が詰まった女達の白い柔らかさにたじろいている。あの人が裏返しにされて、内臓感覚。
Jul 29, 2007
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それは終戦の前日、そして、昨日の夜明け前に起きた。母親は飛翔する直前に、我が子の顔を今一度見たいと思った。しかし、見たならばその一歩は踏み出せなかった。2歳の子供はその瞬間にも生きている証を示すように、母に強くしがみついた。母は水に入る前に意識を失なったけれども、彼は水中でも間違いなく意識があって自覚した、母と一緒にいると。彼は生に執着したのではなく、母に執着した。彼はほんの短い間とても苦しかったけれども、おかげで彼は願いを全うすることができた。
Jul 22, 2007
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Y川の橋の上からその川の氾濫原を眺めると、その葉が指先を開いた手のような形をした、大人の背丈よりも高い植物が生い茂っているのがよくわかる。風が吹くと、その植物に意志があるかのように葉が部分的にまとまって波をうつ。その光景は異国のジャングルを想起させるほどで、毎日、通勤で駅に向かう途上でその橋を渡るたびにわたしの気を引いた。 ある日曜日、わたしがのんびりとY川の橋から風景を眺めていると、一人の男が話しかけてきた。 この植物は子供を喰う。実際にわたしの子供が喰われた。 わたしの子供は可愛らしくて素直だった。目の中に入れても痛くないと言うのはこのことで、わたしは本当にその子を愛していた。しかし、子供が可愛くなればなるほど、いつかこの子が自分から離れて行くという思いがわたしを苦しめるようになった。 子供がまもなく小学校にあがるという時のことだ。いよいよ子供がわたしから離れていく一歩のように感じられてとても切なくなった。今のままで時間が止まってほしかった。 ある日のこと、わたしは子供にこの生い茂る植物群の中を一人でまっすぐに歩いていけと命じた。わたしは子供を手放す決意をしたのだ。最初は子供は怖がっていたが、わたしがこの橋の上からずっと見ていてやると言うと、意を決してこの植物群の中に入っていった。 子供が植物群の中にはいるとすぐに姿が見えなくなり、しばらくは子供の進行方向に沿って植物が揺れていたが、それもやがて動かなくなった。 とても素直な子供だった。親に言われたようにまっすぐに歩いていったのに違いない。まっすぐに行けば植物群を突きぬけ、川岸に出るはずだった。 一瞬、子供の叫び声が聞こえたような気がした。その植物が子供を喰い尽くしたのである。 それ以来、子供は2度と姿を現さなかった。 話を終えるとその男はすたすたと橋から氾濫原に降りていき、その植物群の方に向かった。植物群に入る直前で立ち止まりわたしの方を振り向き、それからその中に入っていった。 橋の上から見ているとその植物は男よりもはるかに大きく、男はその植物の人の手のような葉で押さえつけられていくように見えた。男の姿は緑の塊のように見える植物群の中に入っていき、やがて見えなくなった。
Jul 15, 2007
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すみません。今週は体調不調でお休みします。
Jul 8, 2007
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深夜、会社から帰る途中の電車の中で、わたしは座ってぼんやりと考えていた。結局わたしはこのまま一生を終えるわけだ。自分の人生が平凡だったとは思わないし、会社での目先の仕事で時間を潰してきたことを後悔しているわけでもない。しかし、一度ぐらいこの揺らぐことのなかった日常に衝撃を与えたいという気持ちはかすかにあった。 電車は比較的すいていたが、座席はほとんど埋まっていて、何人かは吊革につかまって立っていた。ちょうどわたしの真正面、わたしの座っている座席とは反対側の位置に中年の女性がやはり吊革につかまり立っている。わたしはその女性を背後から見ている。 疲れているのにちがいない。立ったままで居眠りをしようとしている。体を安定させるためだろうが、吊革をつかんでいる手の甲のあたりに頭を押し付けている。それをわたしが後ろから眺めると、あたかも頭から手が生えているように見える。彼女が居眠りをしてふらつくたびに、頭から生えている手が水の中の海草のようにゆらゆらと揺れるのである。 おそらくは電車内の照明のせいであろう。その女性の髪の毛や首筋があたかも作り物のように感じられる。彼女は頭から手を生やした奇怪な人形なのである。 わたしが何十年と繰り返してきた日常の中にこのような異形なものが存在していたことに驚いた。しかし、しばらくその不気味な異形の人形を眺めているうちに、わたしもやはり電車の中であのように居眠りをしていることを思い起こし、わたしも異形の群の一員であり、それらを内包する日常の陰惨さに気が滅入ってきた。 わたしの降りる駅に着き、立ち上がったときの拍子で予想外に高い靴の音が社内に響いた。そのとき、その女性が意識を取り戻し、駅名を確認するためなのか、わたしの方を振り向いたのである。 異形の人形はたちまち消えうせ、当たり前の中年女性の顔をわたしは見た。わたしの些細な行為が日常の一角を破り、異形の群を霧散させたように感じられて、帰宅するわたしの足取りは一瞬軽くなった。
Jul 1, 2007
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