サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.02.19
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カテゴリ: カーネーション
泣きべそピエロ
 優子は創造する心と独創的な作品が分かる。しかし頭が良過ぎて、それを産み出すために必要な、身をよじるような浅ましい「変身」など、自分がようしないこともまた、よく知っていたのでした。「分かる」ということと、「出来る」ということは、別の事況に属するらしいのです。
 この創造する力とは、例えば人によっては「デモーニッシュ(悪魔的)」とか「狂気」と呼ぶような、常ならぬ心の発動を指すのでしょう。秀才はこの種のコントロール不能な情動の、むやみな発現を基本的に嫌うものです。

 逆に、例の直子の弾けた衣装と驚倒すべきアイメイクは、まさしく自身を創造者に「化身」させるための扮装でした(他の誰にも、その「扮装」は真似出来ない)。で、それは同時に彼女が次女を拒否し、唯一無二の「直子」としてこの世に顕現するために、どうしても為さねばならない「変身」の様態でもありました。
 と考えて来ると、今在る「直子」というのは、まさしく次女から出発して、その「否定形」から出来上がっているわけで、もし彼女が長女であったなら、はたしてそのような「変身」を必要としたのかどうか?そして同じような仕方で、創造する力を手に入れることが出来たのかどうか?

 ところで、今やすっかり廃れてしまったサーカス、子供心にあの「ピエロ」の扮装に可笑しさと同時に、何やら凶々しい「不気味さ」を感じたのは私だけでしょうか?面白芸を何故あの「扮装」で演じなければならないのか?当時の私には分からなかったのです。その思いはチャップリンの出で立ちや、フェリーニの映画を観た後も変わらず、何やら人類史的な刻印を感じないでもない。
 というわけで、今漠然と思っていることとは、またしても内田樹さんの本なのですが(何だか、受け売りばかりで、しょうがないですね。「寝ながら学べる構造主義」文春新書、私にピッタリです)、そこに出ているM・フーコーの話なのです。フーコーの「狂気の歴史」に由れば、西欧社会において精神病者や異形の人たちというのは、かつてはしかるべき宗教社会的役割を負っていたというのです。それは「神に呪われし者」の具象的様態として、常に街中に顕現していなければならない、という意味においてだそうです(コワイ話ですね)。
 彼らが社会の表から抹消されたのは、国民国家と近代産業社会の歴史が、一様に標準化された人間を必要とし出したのと並行していて、精神病学は彼らから「神の教えのネガ」としての聖的役割を奪い、組織的に隔離病棟に送り込む手立てとして現れたというのです(ウーン、難しいですね)。

 しかし、私がピエロに見た「不気味さ」とは、あるいはこの近代以降、表舞台から姿を消したはずの「異形の人」たちの姿を、そこに見止めた結果であったかもしれず、それはまさしく「狂気」を表象したものだったのかもしれません。ピエロの形相は面白芸を見せるためというよりは、社会の表から追いやられた「狂気」の「悲しみ」を表しているのかもしれないのです。そうと知らずか、ピエロのアイメイクには、「涙」が描かれますね。
 チャップリンにおいて「哀愁」だった「変身」の形相は、フェリーニになると明らかに「異形の人」に変質して、観る側に迫って来ますね。

 直子の恐るべきアイメイクと装束は、追いやられた「内心の狂気」を呼び起こすために必要だったのであり、だからこそ彼女の涙は、人類史的な「あわれ」を誘ってしまう(と、ちょっと大げさになってしまいました)。
 ここのシーンの面白味は、彼女がスッピンではなく「ピエロの涙」であることによって、別の新たな表象を示していたからだと私は思っています。

― つづく ―





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Last updated  2012.02.19 08:40:51
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
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