サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2012.10.03
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テーマ: ギリシャ(35)
カテゴリ: 旅行
「アレクサンドリア」
 さて、私がそんなノホホンとした文明感を地中海全般に抱くというのには、もう一つには「アレクサンドリア」(2009年、A・アメナーバル監督)という映画があったのでした。何だかほとんど話題にもならなかったような気がするのですが、たまたま最近観る機会があって、その作り手側の反「権力」的姿勢に舌を巻いたものです。

 詳しい中味はWebその他で見ていただくとして、概要は紀元四世紀末頃のローマ帝国(テオドシウス一世治下)末期のエジプトにおいて、言わば「地中海文明」最後の砦であったアレキサンドリアの図書館が、原理主義的なキリスト教徒によって破壊されていく経緯を扱っているのです。
 で、その図書館の知性と理性の生きた象徴として描かれるのが、実在の女性数学者にして天文学者ヒュパティアHypatia(370年?-~415年3月)で、天文数学とジェンダー問題を歴史ものに混ぜ込んで、すこぶる今ふうの作りになっていますが、私が感心したのはこれがスペイン映画であるということでした。今どきのアメリカではたしてこういう映画が可能だったかどうか?
 イタリアと並んでいわばカソリックのご当地であるスペインで、このような映画が作られるということ自体が「奇跡」のようですが、それがけっこう彼の国で受け入れられたらしいということは、権威の権化ともいうべきカソリックの在りようを、わりと冷静に見つめている目線が、彼の地にはあるということを示しています。

 ここで描かれるキリスト教徒たちは、明らかに非寛容な原理主義者、端的に今のアラブ原理主義者に同定出来るもので、ローマという「世界文明」が衰退期に入り、「寛容なギリシャ・ローマの神々」が当時の人々の現実に訴える力が無くなった時、異教あるいは異種異物は確かにこういう形で、世界標準の文明世界を侵食して行っただろう、と思わせるところがあるのです。
 それはそのまま今の西欧を中心とした世界標準に対する、アラブあるいはアジア的文明観の浸潤の仕方という構図で、彼らには意識されているので、それをあえて自らの宗教の負の起源から描いていこうとする姿勢が偉い。ギリシャ・ローマ文明とキリスト教が西欧世界を根拠付ける二大精神として疑うことをしない、西ヨーロッパないしアメリカのごく一般的な構えに、これはかなり堅い「ヤスリ」をかけているわけでしょう。
 ついでに言うと、この映画では当時のキリスト信者は同時にユダヤ人も排除しているのです。キリスト教の西欧世界への普及の起源がユダヤ人排斥の起源とパラレルになって発生しているというところが注目したいところ。
 要は教義の中味の真贋よりは、教義を人が信じる仕方、信じさせる仕方の問題であって、これはどうも新興宗教や新興勢力が拡大していく時に、しばしば共通して見せる異種異物に対する「非寛容さ」を示していると思う。

 私はこうした映画を観ていると、ここ最近何でもかでもEUのお荷物とひっぱたかれている南欧三国(スペイン、ギリシャ、イタリア)というのは、決してそんな一意的な決め付けで片付けられるほど生半な地域ではなかろう。むしろ今「世界標準」とされている文明観こそ、いかほどの歴史と信憑があるのかいな?と時に思ったりもするわけです。そういう意味でも優れた世界性を有した文学や映画を、一つも二つも持っているということが、いかにそれを生み出した地域や住人に対する外部からの印象を変えてしまうか、改めて考えさせられますね。
 主演はイギリス出身のR・ワイズ、まあ何でも起用にこなす女優さんで、私的にはJ・ロウと競演した「スターリングラード」ぐらいしか記憶になかったのですが、今回はなかなか熱演。皆さんも一度見てご覧になってはいかが?

 下は、リンドス城と村の全景。いよいよその中に入っていこうと思っているのですが。

リンドス 001.jpg

― つづく ―





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Last updated  2012.10.03 00:15:01
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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