tomo_hの映画ログ

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2014.10.05
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カテゴリ: 映画ログ
ベテラン山田洋次監督が、彼のお得意の昭和初期(15年ごろから)の家庭を描く。今までとちょっと違うのは登場人物がこれまでスポットライトを浴びたことのない女中さんが中心になっているのが珍しい。山形から東京に来た二十歳の若い女中さんのタキさんを演じるのが黒木華で、初々しく可愛い。タキは東京の新興住宅地の丘に建つ小さな赤い屋根の洋風の家の平井さんの家に働きに来た。平井さんの仕事はサラリーマンで奥さんと男の子が一人、今なら女中さんを必要としない家であるが、戦前の昭和の家庭では中流の下くらいでも女中さんがいた。居なければ困るのだ、何しろ掃除、洗濯、料理、縫い物、すべて手作業である。これを全部奥さん一人で片づけるとなると座る間もなく奥さんはお茶の一杯もゆっくり飲めなかっただろう。奥さんの助手の女中さんがいて初めてゆとりの時間が生まれる。平井さんの家は子供が一人だけだが、この時代は大概5,6人の子供はいたから女中さんは必須だった。近所でも目立つ赤い屋根の洋風(中は応接間以外和室)の綺麗な小さなおうちに住み込み、きれいな若い奥さん(松たか子)と会社勤めの旦那さんと坊やと一緒に住めるなんて山形から来たタキさんは幸福だと思った。田舎生活ではない都会の暮らしも味わえるし、仕事も畑仕事よりも楽だし、女中さんはそんなに悪くない仕事だった。

さてタキさんの女中暮らしは順風満帆に続くはずだったが、小さなおうちにも変化が起きはじめる。現実主義の凡人である旦那様に対して、ややロマンチストで夢見がちな奥様が目の前に現れた若い文学青年風の男(吉岡秀隆)に惹かれて行って不倫に走ってしまうのだ。家庭の外ではだんだん戦雲が厳しく近づき世の中が戦争待望になりつつある。タキの愛する「小さなおうち」の平和は守りきられるだろうか?

映画は家の中の風雲と家の外の騒然とした世相が同時進行で描かれて行く。戦争に行く恋人と最後の逢瀬に行こうとする奥さんを女中のタキは必死で止めた。奥さんと恋人の運命を左右したかもしれないこの制止は、若いタキの心に重い石となってのしかかった。制止せずにいられなかったタキだが、その責任は彼女を苦しめた。

全体として映画は山田調ともいえるなめらかで手慣れた調子で進んでゆく。良いテーマだと思う。しかし苦言を呈したいのは、現代の平成になってのタキが思い出を話し、弟の孫の青年<妻夫木聡)らがタキの書いた回想録を読むという構造になっている。これは絶対必要だったのだろうか?別れたままだった恋人の消息や坊ちゃんの消息など別に聞きたくはなかった。小さな家は戦災で焼けてなくなったが、その思い出だけが鮮明に老タキの中に或る、これで充分だと思うのだが。特に妻夫木の演じる若者が過去の戦争について類型的なつまらない感想を言うのは安直すぎて嫌だ。確かに当時の日本人はかなりの人がハイになっていたかも知れないが、今、簡単にそれを批判するのはどうか、それじゃお相子だよといいたい。
あれがなければ評価はもっと良くなっただろう。

(おまけ)懐かしき昭和の市民生活の数々のシーンが見られる。奥様のお供で東京市中を歩く女中さん。田舎にいればこんな体験はできない。家の中も台所では立って料理できるし、調理台やガスコンロがある。台所の隅のテーブルに設置されているのはミンチ肉を作るための挽肉器で、ミンチ肉が使いたい時は家で挽いて作っていたのである。

小さい






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Last updated  2014.10.05 21:06:31
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背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
アイスクリーム@ Re:エリザベート愛と哀しみの皇妃(オーストリア、ドイツテレビドラマ)(08/09) 綺麗事ではなくメロドラマ仕立て。 勝ち…
zebra@ ボクからの(おまけ) もう少しコメントします。 tomoさんの記事…

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