tomo_hの映画ログ

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2014.10.06
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カテゴリ: 映画ログ
千利休の実像に迫る映画で、しかも市川海老蔵さんが演じるとあって期待高まる映画だった。確かに非常に勉強になった。堺商人の家に生まれ、師の竹野紹鴎から茶道について学んだ利休は優れた美意識でまもなく師匠を追い越したようだ。紹鴎を海老蔵さんの父の団十郎さんが演じているが、歌舞伎役者のもつ独特の空気は茶人の風格に自然と似合っていて、この配役だけでも満足すべきだと感じた。原作者山本兼一さんの希望された配役だと聞いた。海老蔵の利休は人格的にスケールの大きな人を現していて、当時の大名や、関白秀吉すら彼の前では一目おきたくなるような感じの大物を感じさせる。ずっと昔からなぜ利休が突然、切腹を命じられたか謎になっているのだが、映画ではそれについて一つの答えが明かされる。まだまだ彼の死については諸説の解釈がなされるだろう。永遠の謎を残した偉大な茶祖である。

堺の町で放蕩息子だったころが描かれるのは興味深い。私はずっと長く堺に住んでいたことがあるので親しみがあるが、戦国、桃山時代の面影はちょっと偲べないにしても、南宗寺などがかっての面影をしのばせる場所はある。利休は堺では南宗寺で茶の修業をし、南宗寺とゆかりの京の大徳寺に移った。秀吉の茶僧になって実力を発揮し、聚楽第内に屋敷をもらい3千石もらっていたというからちょっとした小大名並だ。すべてにおいて明察なこの人に秀吉はかなり意見を聞いて頼っていたのではないか。だから三成らの家来が彼を煙たがり、追放の原因になったように見える。賢すぎてねたまれるのも考え物だ。

今のお茶の家元が千という苗字を名乗っておられるように侘茶の基礎を作ったのは千利休だ。映画全体は静かなトーンでやや退屈な感じすらしたが、この時代に彼によって確立された茶室の様式、茶室を建てる場所、などが画面に出てくる茶室を見ていて良く分かった。究極のシンプルさの中に最大の美を見つけた利休は素晴らしいと思う。茶道具についても値段や来歴などよりも如何に侘茶の精神にぴったりくるかで選んでいて、今でも茶道具を見立てる際は、「これを利休ならどう評価するか」が基準となっているかと思うくらい、大きな影響を残している。こういう利休の積み立てて行った茶の道を映画の映像で見てゆけるのは最大の特典だろう。

彼の無二の親友(?)だったのに切腹を命じ(一説には利休が折れて謝ってくるのを期待していたとか)た秀吉という人も、大友南朋によってかなり良く描かれている。茶については好きで熱心だったが、彼の性格は「侘び」とは合わない。金の茶室を設計させたのは秀吉だった。だが、秀吉の案で企画を利休や当時の大茶僧がして、開催した有名な北野大茶会(1587年10月)が面白い。茶の好きな人は誰でも参加でき、2畳のスペースをもらって茶席を設けられる庶民参加の大イベントで、服装も問わない、お菓子に干し柿を使った人もいるそうだから前代未聞の茶会だったろう。10日間の予定が1日で終わったのは残念だが。もちろんこの茶会で一番人気の茶席は利休のだった。
大きな業績を残し謎のうちに死んだ利休、いったい何があったか尋ねたい人は多くいるだろう。

(おまけ)堺には古い饅頭屋が多い。京都や金沢やそのほか島根などお茶の盛んだったところには、美味しいお饅頭が多い。茶道の残したありがたい置き土産だ。
饅頭を食べるときはせめて煎茶でもいいからお茶と一緒にたべて欲しい、饅頭への敬意をこめて。

利休にたずねよ






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Last updated  2014.10.07 00:56:16
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背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ ニーナ・ホス 「水を抱く女」に、上記の内容について記…
背番号のないエース0829 @ Re:ヒトラー 映画〈ジョジョ・ラビット〉に上記の内容…
アイスクリーム@ Re:エリザベート愛と哀しみの皇妃(オーストリア、ドイツテレビドラマ)(08/09) 綺麗事ではなくメロドラマ仕立て。 勝ち…
zebra@ ボクからの(おまけ) もう少しコメントします。 tomoさんの記事…

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