本を旅の連れに

< 新しい記事

新着記事一覧(全294件)

過去の記事 >

2005/07/09

こわ～～～～い話

カテゴリ：読みきり小説

夏なので夏らしく怪談話でも。

　　　　ふと、足元がなくなり落ちていく夢を見てしまった。足場を求めてあがく

も、足場などあるわけがない。その恐怖の瞬間をしっかりと味わった所で目が覚め

てしまった。腕時計を見ると午前一時、窓からは月光が注ぎ、下を見ると静かな道

路を車が今しがた通って行った所だった。「午前一時に鏡を見ると、自分の死んだ

時の姿の幽霊が現れ、それをみたものをその場でその状態にして殺してしまう。」

今日学校で聞いてしまった怪談話の中にそんなものがあり、今の時間もちょうど午

前一時になっていたため、奇妙な焦りを私は感じた。

　　　　こんな事まで思い出してしまうと、たいていそのままでは眠れない。私は

とりあえずキッチンへと向かうことにした。電気をつけるのが億劫だったので、そ

のまま私は冷蔵庫をあける。キッチンではその冷蔵庫の光だけが辺りを照らしてい

る。私は冷蔵庫から牛乳を取り出し、コップ一杯注いだ後、砂糖を一さじ入れ、電子

レンジに入れた。眠れない時には温かいミルクがよく効くのだそうだ。暖めている

間、またベッドに戻ろうとしたが、そのとき一瞬なにかの気配を洗面所で感じた。

私は恐る恐るそっちを伺うも、そこには誰もいない。私は確かめようと洗面所へと

入り電気をつけた。肌色のランプをともした洗面所には、やはりなにもない。気の

せいだとおもい、入ったついでだったので、私は温水で顔を洗おうとした。蛇口を

ひねると勢いよく水の音が鳴る。その水をすくい、顔をぬらし鏡を私は見た。だが

私はその鏡の私には額から血が流れていることにきずいた。とっさに額を触るも指

に血はついていない。だがさらに肝心なことに、私はその動作を取ったはずなの

に、鏡の私は額を触っていなかった。やがて鏡に映った私はゆっくりと口をあけ、

笑う。その唇から、口から、歯から血が滴り落ちていた。そして鏡の中の私が手を

伸ばし鏡から手が出てくる。その手はまるで水から出てくるかのように、何の抵抗

もなく現れた。とっさの事に私は反応しきれず腕を掴まれてしまう。そしてそのま

まその腕は、私を鏡の中へと引きずり込もうとしていた。

　　　そこで私は道場で習っていた合気道の術をとっさにかけた。おもったより鏡

から出てきた私には力がなく、たいして合気道を極めていない私が、そのままぎゃ

くに鏡の私を鏡から引きずり出す事に成功。そしてそいつが動けないようしっかり

と柔道の押さえ込みをかけた。鏡の私は必死に抵抗していたがカンペキに押さえ込

みが決まると暴れれば暴れるほど痛みが走る。だがなお暴れていたため仕方なくさ

らに力を込める。「ギ、ギブ、ギブ・・・」と鏡の私は腕を手で叩きながら苦しそ

うに言ったが、はなしたらまた何をされるかわからない。さらに私は押さえ込みに

力を込めた。水を出しっぱなしだったので、母がその音に気付き洗面所に現れた

が、その光景を見て冷静に彼女は警察を呼んだ。数分後警察のサイレンが家の外か

ら聞こえ、抑えていた鏡の中の私の腕に警察は手錠をかけ、そのまま連行していっ

た。あくびをして母はまたベッドに戻り私ももう寝ようかと思ったが、電子レンジ

でミルクを温めていたことを思い出し、キッチンへと向かった。ミルクの甘さは勝

利を称えるにはすこし子供じみていたが、とてもすっきりとした味だった。その夜

は、私の、少し驚いてしまったが思い出に残る一夜となった。

最近はこんな感じの怪談話がはやっているそうで。
ちょっと明日日記がかけるかどうか心配だったので今日のうちに
書いておこうと思って書きました。もはやまったく日記ではありませんが。
それでは今日はこれにて失礼。

お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう