2022年06月29日
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テーマ: 老犬と暮す(210)
カテゴリ: 介護と看取り
タカオという老犬が亡くなった。

言い方は悪いが…
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​立派な「死に様」だったと思う。

タカオが生きてきた証を
ここに遺します。

※今日のブログはとても長編です。
ダラダラとした文章が続きます。

独り言のように 綴ってるため
​​​​​ 荒い表現があるかと思います。
申し訳ございません。






タカオという犬に出会ったのは、
去年の6月17日…
動物愛護センターに
収監されてた犬だった。



みやざき動物愛護センターは、
保護期限が切れたとしても、
譲渡判定に落ちたとしても、
直ぐすぐに「殺処分」はしない。

ただ…

檻に空きがなくなったときは、
判定不合格の、収容期間の長い犬が
注射による安楽死で処分される。

収監できる場所がないのだから
仕方のない選択だと思う。
(民間でも、殺したくないからと 押し込み式の保護をして
結果的に心や命を死なせてる今の時代だから、
「仕方ない」とあえて表現しました)




「判定不合格」 という文字。

タカオという犬は、
いつまで生きれるだろうか?

収容されて10ヶ月か…

老衰が先か、安楽死が先か、
タカオという犬に
未来なんてなかった。



この日、私がレスキューしたのは…

下半身麻痺、水頭症、ヘルニア、
容態の悪い老犬等6匹…
タカオという犬は、
その中にいなかった。


レスキューした犬猫は、
施設の中にポンっと入れて終わりではない。
レスキューした夜は、
ひとりひとりの体調だけではなく、
性格や気質の観察が必要。
夜通し行う
多頭の観察眼は体力勝負。
だから、
タカオという犬のレスキューは
翌朝に延期した…それだけの理由だった。

翌朝 6月18日…

タカオは、皆と一日遅れで合流。



ひと足先に、前日レスキューしてた
老犬「お銀」とお隣同士。



タカオは、若干の斜頸があり、
三半規管が正常ではないのだろう…
50㎝離れた場所でも、何か動くだけで
顔がビクンビクンっと反応してるため、
前庭疾患になることも覚悟していた。



日本犬の血が強いのだろう…
タカオは、頑固な性格だった。

「おいっ!そこは触んなっ!」

​「赤ちゃん扱いすんじゃねぇっ!」​

ガウガウ、とにかくよく怒ってた。



だけど、
幸せそうな表情を浮かべてるとき
抑えきれずタカオの体に触れると、
顔をうずめてこう言うのです。

「あ~…俺幸せだわぁ」 …と。



老犬が頑固になるのは
「老犬あるある」のひとつ。

体が思うように動かなくなった苛立ち、
プライドを持ち凛と生きてきたはずなのに
老犬になって、周りから急に
赤ちゃん扱いされる悔しさ、
老犬になると色々あるのだろう。

「タカオのプライドを壊さない!」
私とタカオ、
初めて交わした約束だった。

まだまだ先の約束になるだろう
そう安心していたのに…



タカオの足腰は弱っていき、
認知症を発症した。

基本、体が濡れることを嫌がるはずなのに、
土砂降りの雨の中を
平気で歩き回るようになったり、
行動の変化が徐々に表れはじめた。


いつものタカオなら、
私がカメラを向けると
嫌がって視線を逸らすのに
この日のタカオは違っていた。



目を逸らすことなく
凛とした目で私を見つめ返した。

今、振り返ると…
タカオなりに
伝えたいことがあったのだろう…
いや、訴えていたのだろうか?

タカオレスキューから4ヶ月…
自力で立ち上がれなくなり、
24時間体制での介助が必要となった。

タカオは、ホスピスルームから母家の廊下に
引っ越しすることとなった。



抱き上げて移動させようとしたとき
何度も腕に咬みつこうとした。
いつも以上に激しい怒りが、
身体全体からにじみ出ていた。

初めて見る程の強い抵抗だった。

抱き上げられることへの
怒りだと思っていたが、
本当は、介助生活に入ることへの
抵抗だったのかもしれない…。



介助を受けてることへの怒りや、
歩けない苛立ちが、
日に日に増していくようだった。

​「俺は…なぜ立てないんだ?」​

「俺にベタベタ触んな!」

「憐れんだ目で俺を見るな!」



タカオの悲痛な感情は
「夜鳴き」 という形でぶつけるようになった。

​タカオのプライドを守りたい…​
そう約束していたのに、
タカオは怒ってばかりいる。
怒らせてばかりいる。

タカオとの関係性に息詰まり、
どう寄り添えば良いのか…
悩んだ時期もあったが、
やっと答えにたどり着いた。



タカオは、日本犬の気質を持ってるからこそ、
顔周りとか、触られてイヤな部分を
介助が目的だからと触られることは
イヤに決まってる!

タカオが怒って当然!

むしろ…タカオらしいじゃないか!

タカオらしい生き方じゃないか!



そこに気付けたときから
笑って欲しいとか、
穏やかな気持ちでいさせたいとか、
そういうのを止めた。

プライドの高いタカオを守ることだけに
専念しようと思った

タカオを介助する前に
必ず声をかけるようにした。

「消毒するから、冷たいよ」

「オムツ着けるから、腰をあげるよ」

「お散歩行くから、抱っこするよ」

今から何をするのか必ず伝え、
タカオに敬意を払うよう心掛けた。



認知症だし、犬だし、
言葉なんてわかるはずない…
そう思われるかもしれないが、
毎回声をかけるうちに
「消毒」「おむつ」「散歩」
新しい単語を覚えていく。

そして、その単語の後に
自分が何をされるかを把握していく。

だから、びっくりして怒ることは
なくなっていった。



寝たきりになったからといって
何もできなくなったわけじゃない。

お天気が良い日は
ホスピスルームの老犬達と一緒に
日向ぼっこする時間もつくった



夜には決して見せてくれない
ウキウキした明るい表情で
「幸せ」だということを伝えてくれた



今、生きてる機能を死なせてはいけない!

少しでも筋力低下を避け、
完全寝たきりになる時期を遅らせたい!

その一心で、タカオを外に連れ出した



嗅覚をたくさん使って、
肉球からたくさん刺激を受けて、
タカオがタカオらしく生きれる時間を
与えてあげたかったけど…

老いに逆らうことはできない
タカオにも、必ず終わりは来る

​介助期が終わり…​



​介護期が終わり…​



​看取り期に突入した。​



6月16日の夜勤日誌に
19:06 別棟に居た私を
タカオが吠えて呼んだことを記していた。
そこからは、数分間隔の夜鳴き。
老犬達のお世話で、タカオの視界から消えると
吠えて呼び戻そうとしたのだろう…

「看取り期」とは、
苦しまず楽に死ねるためのサポートである。
体内に水分が残っていると
死ぬ直前に苦しむことになる。
もちろん、点滴も水分であり、
「介護期」から「看取り期」に移行したときに
点滴もやめなければいけない。

もちろん「看取り期」に入ると
体は自然に食べる事への
拒否反応を示す。
このときに強制給餌も終了させる。

水は飲みこむ力があれば飲ませるが、
最後は湿らす程度に留める。

介護日誌には
0:47 「流動食も吐き戻しそうなので延期」
そう書いてある。
延期…ということは、
まだ希望を持っていたのだと
自分自身の心情が垣間見えた。

それからわずか数分後
1:06 「もう長くないだろう」
ようやく「看取り期」へ入ろうとしてたが…



2:40 「どうしてあげるのが一番良いのか…」
この時間に生きた私の心情は、
「看取り期」に入った事実を
受け入れられずにいたのだろう…



時間は書いてないが、おそらく7:30頃だろうか…
やっと「看取り期」を認めた瞬間だった。



いよいよ、お別れの日が来るんだ…

タカオを看取るココは、
あくまで保護施設である。

たとえ「看取り期」であろうとも、
危篤状態でない限り
ずっとついててあげることはできない。

スタッフ、ボランティアさん、
もちろん私も、
保護施設の大勢の犬猫たちの
お世話にまわらなきゃいけない。
そこが、家庭と施設の違いでもある。
お互いに苦しいが…
受け入れなきゃいけない。

少しでも「家庭」に近い環境で
最期を迎えさせてあげたい…
別棟のこのお家で
このお部屋で
タカオの最期を看取ろうと
タカオを迎え入れる準備に入った。



ご支援で頂いた見守りカメラ「furbo」で、
タカオに異変がないか
スマホで確認しながら
最期を迎える場所の準備。



タカオが快適に過ごせる準備も終わり、
(タカオのマットで寝てるのは別犬です)



母家の廊下にいる
タカオを迎えに行くと、
すでに意識はもうろうし
最期が近いな…はっきり感じた。

普段の私なら、
絶対にしない行為なのに、
直感的にタカオを抱え上げてた。
「タカオをこの場所で死なせてはいけない!」



タカオを抱きながら
徒歩30秒の看取りの家へと
移動してる途中、
下顎呼吸がはじまった。



私は足を止めた。
ブロックに腰を下ろし、
このまま外で
最期を迎えさせようと思った。

呼吸が止まり、
心音が静かになるまで
5分位だろうか…

11:17
タカオ 永眠

ここまで来て、
なぜ、家の中に入れなかったのか?
なぜ、タカオが楽な姿勢マットの上で
最期を迎えさせようとしなかったのか?

たぶん…
タカオが望んだんだろうな…。

太陽の下で
鳥のさえずりを聞きながら、
風を体に受けながら、
みんなに囲まれた最期を
タカオが選んだんだろうな…。

​タカオと青空、​



​タカオと太陽、 ​​



私のスマホに保存してた
タカオの写真は、
なぜか、青空や太陽が入るような
アングルの写真が、多く残っていた。



たぶん…
本来のタカオらしさを感じたのが、
青空と太陽の下にいる
タカオだったのだろう。



「太陽の下でうつらうつらとお昼寝…
気持ちよかったよね。
タカオ…あんたが望んでいたのは、
陽を浴びながらの最期やったとよね?」




タカオは不思議な犬だった。

2021年6月17日
愛護センターで、タカオと出会った、
タカオと出会えた記念日にだったのに…

2022年6月17日
出会った記念日は、
永遠のお別れの日になった。



そして…
いのちのはうす保護家に入居した
2021年6月18日

第二の人生をスタートした
記念日だったのに…



2022年6月18日
いのちのはうす保護家から旅立った。



「母ちゃん悲しいよ…
タカオとの記念日が
全部、悲しい日になったやん!
なんでこの日を選んだと?
この日じゃなきゃいかんかったと?」



いや!違う!

タカオが選んだ死に場所。

タカオが選んだこの日。

全部全部、褒めてあげなきゃいけない!



​立派な最期だったよ…って。​



タカオは、保護家みんなの誇りだよ…って。



最後まで自分の足で歩き、
最後まで毅然とした態度で
保護家のみんなと接してくれた
そんなタカオに敬意を表します。



「少し休んだら、
また帰っておいでね。
私たちとは、一生無縁のお家に、
私たちと、二度と出会うことのない
幸せにしてくれる家族を選ぶんだよ?
二度と、ココに帰ってくるな!」



タカオ…ありがとう。

出会ってくれてありがとう。


​​​​​​​​​​​​​​​​​







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最終更新日  2022年06月29日 15時32分59秒
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