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2005年08月13日
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カテゴリ: 読書
ジャムの真昼
アラスジ:僕はジャムを舐める。叔母さんが僕にくれたから。舐めながら、ベットで男に舐められる叔母さんを眺める。僕はジャムを舐める。母さんが僕にくれたから。舐めながら、ひたすら歩いた。戦争が終わり、僕らは新しい場所にいかなきゃならないんだ。母さん達は馬車に乗っていったけど、僕は歩いた。母さんが持たせてくれたジャムを舐めて。やがて、壜は空っぽになりうち捨てたけど、僕は歩いた。歩き続けた。だって、向こうでは母さんや兄さん妹が、僕を待っていてくれるから…。表題作他全7編の、写真や絵をモチーフに綴られた幻想的な短編集。


日に日に、訳判らないない状態な粗筋になってくなぁ。
ま、私が拙筆の所為もありますが、何と申しましょうか、書き難い話でもあるんだよん。

身も蓋もなく書いちゃえば、戦争による悲劇の話。
第2次世界大戦後、ヨーロッパ東部に入植していた独逸人に退去命令を出され、必死に逃げる過程で打ち捨てられた子供とその後の姿を、捨てた側の罪悪感と共に描いている。
“叔母”と一緒に語られる場面と、“母さん”との場面が交錯し、読者にトリックを仕掛ける。
幻想譚の体裁をとっているようにみえ、その実、ミステリ作家の技も繰り出しているのだ。
注意深く読めば、途中『あれ?』と思わせるひっかけが幾つかあり、ラストで明かされる事実。
二つのジャムが混じる時、その悲劇性はより鮮明になる。
でも、もう1つの視点で見れば、“少年”と“叔母”の倒錯的とも言える濃密な関係に、エロティシズムと魂の共鳴を読み取る事も出来る。
表紙にも使われているモチーフとなった絵―我が身を引き裂く筋骨逞しい男の中には、驕慢な表情の美しい女がいる―を見ると、後者の解釈が色濃くなるのだが。

精神の真昼。
あけ初めし初々しい朝の健全さでもなく、暮れ行く夕の寂寞でもなく。
真っ白な日の光が、真上から照らし出す時間。
心のあり様を時間で分けたならば、晧晧と曝された真昼は、案外と1番狂気に近い時間なのかもしれない。
甘いジャムの滴る正午、人の心が溶ける真昼。

他の短編たちも、妖しい焔に映し出される狂気を見せてくれる。
欧州、特に独逸を舞台にした作品が多い。
皆川の代表作 『死の泉』 もナチスをモチーフにしているし、特別の思い入れがあるのだろう。
最後に収録されている『少女戴冠』でも、その辺りの心情を吐露している。
(まぁ、この作品の舞台はアメリカだけど)
この少女戴冠の写真が良い。
一昔前に、芸術のテーマとしてフリークスが流行った事がある。
幾つか、写真集や雑誌の特集が組まれていたと記憶する。
良識ある人間が“これは差別ではないんです”と目を背け、なかった事にしてきた逸脱した存在を、白日の元に曝け出し、見る者の意識に揺さぶりをかけるアート運動だった。
グロテスクなものはグロテスクなままに。
その醜悪さは、果たして被写体の醜さなのか、それとも見ている側の心の歪みの投影なのか。
それを問いかけていたのかもしれない。
当時、私も幾つかのそう言った作品を目にしたが、この少女の写真はその中でも出色の作品であろう。
歪んで千切れた腕も、奇怪な義足も、溶け縮んだ膚も、全て受け入れて胸を張る美しい少女。
皆川好みの写真だ。
ただ、残念ながら、それに対して出来あがった小説は、彼女にしては多少平凡な気もする。
と言うか、あのオチはありきたりだろうよ。もう一ひねり欲しかった。

皆川の文章は、好みが別れるところであろう。
美しい文ではあるが、詩のようでつかみ処がない。
それが幻影の焔を揺らめかせ、より魅惑的にみせてくれるのだが。
読み手に親切な小説家、ではないのは確かだろう。
それでも、この甘いジャム、舐めてみると病みつきになるよ。





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最終更新日  2005年08月13日 23時45分05秒
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