街。の声

2004年07月01日
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テーマ: たわごと(27375)
カテゴリ: 教育







ある日のことじゃ、隣村からひとりの男が洗面器を片手に歩いておった。



その男はワシの家に真っ直ぐ歩いてきおった。



すると、挨拶も無くワシの家にあがりこんで水を汲み始めおったんじゃ。



8分目ほど水を入れると、ちゃぶ台の上にそれを置きワシを睨んどる。



ちゃぶ台の向こうとこっちでニラメッコじゃ。



ワシぁ、どうしていいかわからんかった。



こんな男、見たこともないし何で家にあがりこんでるのかもわからん。



そう思っているとな、その男は右手を上にあげよったんじゃ。



ワシぁ、攻撃されるんかと思って身構えたんじゃよ。



すると、その男はそのまま頭の後ろから自分の首を掴んでな。





「えぃや!」





と叫んだかと思うと、ザブンと洗面器に顔をつけ始めたんじゃ。


ワシぁ、何が起こったのかわからんかった。



それからどれくらい経ってからじゃろうか。男は突然顔をあげよった。





「ぶはーっ・・」





顔をずぶ濡れにした男は、はぁはぁ言いながらワシを睨んでおった。



ワシぁ、何が起こったかわからんでどうしたものか困っとったよ。



いきなり洗面器を持った男がやってきて、ワシの家にあがりこんどる。



一体どうなっとんじゃ。



すると、その男は怒ったようにこう言ったんじゃ。





「オラが溺れかけとるのに、
オメェは何をボーっとしとるんじゃ」






ワシぁ、目が点になっちまった。



溺れかけとる言うても、そりゃ洗面器じゃ。



苦しかったら顔をあげればいいんじゃなかろうか。



誰も頼んどりゃせん。



突然やってきて他人の家にあがりこんで勝手にやっとるだに。



この男は何が言いたいんじゃろ・・そう思ってるとまた怒鳴りおった。





「オラは死にそうになっただ。
オラを殺そうとした犯人を探すべ」






ワシぁ、顎が外れそうになった。



鼻水くらいは出とったかもしれん。



この男は頭がおかしいんじゃろか。



いや、きっとそうに違いない。



そうじゃなければ説明つかんじゃろ。



だからな、ワシは言ったんじゃ。





「犯人探しちゅぅても、押さえつけたのは自分の手だべさ・・何を言っとるんじゃ・・」





すると、男は顔を真っ赤にした。身体がわなわな震えておる。



そしてこう言いおった。





「何で殺されそうになったオラを責めよるんじゃ。
こんなヒドイ爺は見たことないわぃ」






ワシぁ、ヒドイ爺か?



男は、まだ自分の首を後ろから掴んだままワシ睨んどるんじゃよ。



その、掴んでる手が犯人じゃろうて。



胡散臭そうにしていたワシを見て、捨て台詞を残しその男は洗面器を片手に出て行った。





「被害者のオラをそんな目で見るなんて・・
オラもう誰も信用出来ん。もうここには来ん」






そして、隣の家に入って行ったんじゃ。



あの男は何しに来たんじゃろう・・





いいか、坊主。

被害者かどうか、弱者かどうかは周りが判断するもんじゃ。

その人間の評価というものは、往々にして周囲が判断するもんじゃ。

自分で「オラ被害者だど」なんてそれを盾にしてる奴ほど胡散臭いもんはない。

自分で「オラ弱者だど」なんて胸張ってる奴ほど胡散臭いもんはない。

当事者は事情を説明して、主張やスタンスを通して周囲に判断を委ねるんじゃ。

自分の主張が通らんからと言ってスタコラサッサはいかん。

何しに来たんか、どうしてそうしたか言ったかくらいは説明せんといかんのじゃ。

説明責任なんて堅苦しいもんじゃない。

自分からズカズカとあがりこんできたんじゃからのぅ。





それが常識っちゅぅもんじゃ。





踊るなら踊るで、その収拾の責任も負わねばならんっちゅぅこっちゃ。

自分の滑稽さを他人のせいにしちゃいかんぞ。

自分で自分の首を掴んで「誰だ、オラの首を掴んどるのは!」はいかんのじゃ。





ただのバカかと思われるぞ。










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Last updated  2004年12月23日 11時57分11秒
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