「畠山~、打て~」「ハタケぇ~」
。ネット裏、そして三塁側後ろにある土手からも大きな声援が飛んだ。 イースタンリーグ・ヤクルト対ロッテ戦
(2008年4月6日、ヤクルト戸田球場)は、スコア1-1の同点で9回裏を迎えていた。ヤクルトの攻撃は二死ながら走者は二・三塁。打席に立ったのは 畠山和洋
、一打サヨナラのおいしい場面。だが畠山の打球はボテボテのセカンドゴロで、ヤクルトのチャンスはあっさりと潰え、スタンドからは一斉に 「あ~ぁ」
とタメ息が漏れた。
当時の畠山は皆が実力を認めるものの、外人選手とポジションがかぶって一軍で活躍する機会に恵まれない不運なスラッガー。それでいて人のいい、どこか憎めないキャラクターで、生れるのがもっと早ければ漫画『がんばれ、タブチくん』に ヤスダくん
とともに登場してそうなキャラクター・・・。不運といじられキャラ、それがボクの畠山評だった。だから「打て~」という声援も、「あ~ぁ」という嘆息もあくまで予定調和的というか、声援を送るファンにとってただの「想定内」のひとコマのように思えた。
■ただ昨年のヤクルト対広島戦(2010年8月18日)で、 初先発の広島・今村猛から満塁本塁打をかっ飛ばした
ことで、ボクの畠山評はガラリと変わった。その理由は・・・、
今村猛
はその前年のセンバツでチームを優勝に導いた清峰高のエース。清峰に決勝で敗れたのは、 菊池雄星
のいた岩手・花巻東高である。そして畠山の実家は花巻にある(高校は 専大北上高
)。前説が長くなったが、つまり 岩手県民の悲願(優勝)を打ち砕いた今村に対し、およそ1年半後、畠山が満塁本塁打を放って仇を討った
という構図に思え、同じ花巻出身のボクの畠山評は「ただただ頼もしい男」に変わったのだ。
■そして今年、ついに畠山は真価を発揮した。さらにファン投票でオールスター初出場を決めるオマケも付いた。今日の対読売戦では満塁の好機に、好投する 西村健太朗
から渋く左中間に適時打を放つなど、4番らしい堂々としたバッティングだった。以前のように 「畠山、打て~」
は、もはや 「あ~ぁ」
という嘆息のための前振りではない。 「やったぁ~!」
というファンの歓声が、必ずその後にあるのだ。
専大北上高時代、甲子園で見せた打球の強さは群を抜いていた。ただの内野ゴロであっても、打球の速さがまったく他の打者と違っていた。間違いなくプロに行く逸材だと思っていたし、プロでも早々に活躍するものとボクは思っていた。でもあれからすでに11年の月日が流れた。多少遅咲きになった感じは否めないけれど、畠山にとって真価を発揮するプロ生活の本番は、まだまだ始まったばかりなのだ。
■畠山の父・司さんも専大北上高のエースとして1972年のセンバツに出場した。この時は初戦の花園高戦に勝利し2回戦にコマを進めたが、日大三高にスコア1-4で敗れた。ボクは当時、甲子園から戻ったばかりの畠山投手と同じ路線バス(岩手県中央バス)に乗り合わせたことがある。ほっぺたが赤いのが特徴で、すぐに畠山投手とわかった。最後部の座席に堂々と座る姿を見て、格好いいなぁ! と思ったことを今でもよ~く憶えている。
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