「ウェブ進化論」私的検証022---第一章 「革命」であることの真の意味 その7
とはいいつつ、このまま、次にいくのは、なんとなく後味が悪い。複雑とはいえ、わずか数ページである。なんらかの理解をもう少し深めておかなくてはならない。
少なくともこの章は 「革命」であることの真の意味
というタイトルなのだから、おぼろげながら、その言葉の根拠を掴むことはできないか。
ブライアン・アーサー
については、
サンタフェ研究所
に属する現代の超知的生命体で、
「収益逓増と経路依存―複雑系の経済学」
という著書のある人物であるということは分かった。つまり、
複雑系
の人で、この複雑系というのは決してジョークではなく、そういう分野があるのだ、ということも分かった。
いずれにせよ、この「ウェブ進化論」の著者は、あちこちの知的イデオローグを自らの論旨の根拠として引っ張りだしてきているのであり、この本がさらに「複雑」になることに拍車をかけているようだ。
つまりは、ブライアン・アーサーの技術革命史観によれば、
(1)かなりのスケールでのターピュランス(乱気流、大荒れ、混乱、社会不安)
(2)メディアが書き立てるメディア・アテンションのフェーズ
(3)過剰投資からバブル崩壊へ
(4)10年、20年、30年かけての「大規模な構築ステージ」へ
というプロセスを通っているIT革命はまさに(1)~(3)のプロセスをすでに経過し、いよいよ(4)へと入っている。したがって、これから2000年から2030年にかけて、本当の大変化が起こるのである、というのである。
ブライアン・アーサーをバックにしながら、結局、著者がいいたいことは、こうなる。
(1)21世紀の最初の20~30年間に経済に深い変質が起こる。
(2)それはすべてのものがつながってお互いに知的に交信しはじめて、プリミティブだが経済の神経系ができ初めるからである。
(3)我々が想像したこともなかったような完全に新しい産業が勃興する。
(4)21世紀の最初の20~30年間は、何とか米国もリードできるだろうが、技術は世界に拡散していく。
(5)英国で興って他国へとコピーされた最初の二つの革命(産業革命と鉄道革命)は、経済の筋肉系を供給した。
(6)情報革命は、筋肉もエネルギーも供給しない。供給するのは神経系である。
(7)長期的にみれば、これは産業革命よりももっと深く、もっと重要な転換である。
p044
ここまでやってきて、ようやく
「ウェブ進化論」-本当の大変化はこれから始まる
-
という本著は、そのタイトルの意味するところが、単にムード的なものではなく、きちんとした思想的背景により裏打ちされている、ということを主張している。
技術革命史観、という言葉をGoogle等で検索してみたが、適当なページを探すことは出来なかった。かつての産業史を俯瞰することによって、なんらかの味付けをしたものだろうが、たぶん、腕のよいシェフのような思想家が、五つ星レストランのように、一流のご馳走に仕立て上げているのだろう。
さて、ここまでくると、雑感としては、二つ。
一つ目は、さて、これから30年間だとすると、もうあと10年ほどで引退する私には、ちょっと、もうどうでもいい話かなぁ、という気分。それに2012年には、
アセンション
が起きて、云々、という話もあるし、まぁ、未来予測なんて、どうせ、いい加減なところがあるよ、という眉唾な疑いの心はぬぐいきれない。
もう一つは、わずか10数年といえども、自分の現役時代についての未来予測を立てておく必要はあるだろう。しかも、一般論ではなく、自分の主なるご飯のモトである、保険代理店、という職業にどういう影響を与えてくるのか、あるいは、その職業をどのように生き抜いていくのか、ということを真剣に検討しておこうではないか、という感覚である。
アメリカ・インディアンは、7代先の子孫のことまで考えて、物事を判断するという。私もまた、決して、刹那的になって、投げやりな考え方にならずに、一世代25年として100~200年先まで見越した形で、ものごとを判断していく必要があるのだろうと、思う。そういう意味では、とにかく「ウェブ進化論」を足元まで引き寄せた形で、この後も本著を読み進める必要を改めて痛感する次第では、ある。
フューチャリスト宣言 <1> 2007.06.06
ウェブ仮想社会「セカンドライフ」 2007.06.05
Web屋の本 2007.06.05
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