「ネットと戦争」
9.11からのアメリカ文化
青山 南 2004/10 岩波書店 新書 208p
★★★☆☆
図書館に行って、あちこち見ていても、実際には本当に読みたい本に出くわすということは少ない。あ、こんな本がある、と思って手に取っても、結構前に発行されていたりして、ああ、もう少し前にこの本と出会いたかったなぁ、と残念に思う
ことも多い。長いこと偏った読書をしていたのだから、仕方がないが、もちろん今でも決して片よっていないとは言えない。
出会いにはそれなりに運命的なことがあるのであるから、とにかく出会ったことを喜び、時期を逸したことを大げさに嘆くのはやめよう。この一冊なども、出版されたのはわずか2年前だが、今読むのと、2年前に読むのでは、こちらの感性がだいぶ違ったものだったろうなぁ、と思う。
ネット社会のグローバルな発展を喜び、SNSやブログなどで積極的に参加して、なにごとかの平和な社会への模索をしよう、という時、どうしても9.11のことが話題になることが多い。かなりの衝撃的なことであったし、その前とその後では、世界の方向性がまったく逆転してしまったほどの変化があったわけだから、無視することはできない。
しかし、何事においても、まずは9.11は「大事な原点」だった、というような扱いをされると、私はすこし引いてしまうところがある。たしかに9.11は大変な事件だった。世界中を震撼させた。しかし、それ以前でもいろいろあったのではないだろうか。 オウム事件
や阪神淡路大震災そしてWin95の発売があった95年なども、大きな節目の年だった。
それ以前なら湾岸戦争の勃発、あるいは、70年安保や、第二次世界大戦や、それぞれに、共同体験としての原点ともいうべきものがあり、また、その時、ひとりひとりは何していたのかという検証作業も繰り返しなされている。
9.11が何事かの原点のようにして言われることは今後も永遠に続くのであろうが、私は、その事実があったことを記憶しつつ、そこを離れてもっと大きな視野で世界というものを見てみたいと思っている。9.11に相対化していては、そこから出てくる以外のものに目が行かなくなってしまう可能性がある。
この本、9.11前後から3年程にわたって書かれている本で、ネット上の画像がないと、ちょっと退屈な感じになってしまうかもしれない。翻訳家が見るアメリカのネットだから、とても新鮮な感じがする。そのようにネットを見続けていたのだなぁ、とあらためて関心する。
「インターネットとのぼくの出会いは1999年で、遅いほうである。」p205という「あとがきー2004年9月」というところを読んで、ふむふむと思った。この方、たしかに「遅い」のである。その時初めてパソコンを使いはじめた、ということなのだから、ネット社会への「参入」は確かに遅い。その遅めにやってきた方がまずは9.11に遭遇して、ネットのその「威力」に圧倒された、という本なのかもしれない。もちろん、当時のネット社会と、現在のネット社会には大きな差異が生じているのは確かなことだ。
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