地球人スピリット・ジャーナル1.0

地球人スピリット・ジャーナル1.0

2006.10.15
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カテゴリ: 地球人スピリット

地球人スピリット・ジャーナル 2.0 につづく



「人の心はどこまでわかるか」
河合隼雄 2000


 1928年生まれの著者、72才の時の心境である(現在78才)。河合隼雄、日本において、心理を学び、心理を実践している人達で彼を知らない人はいない。日本にユング心理学を紹介し定着させた大御所にして、臨床心理士制度を整備する土台づくりをリードしてきた人、そのような、私の理解でいいのだろうか。

 リーダーでありながら、研究者、そして、ひとりのカウンセラー、サイコセラピストとしての実践家でもある。いや、基本的には限りなく無数の実践からでてくる河合ワールドというものがある。彼の本には、体系的に触れたことはないけれど、私も何冊も読んでいる。そして、一人のカウンセラーとして、かなりの影響を受けてきた。多分、日本においては、第一人者、と言ってもまちがいないだろうし、彼の言説に賛成しようが批判しようが、とにかく彼がいてくれるということは、限りなく安心感をあたえてくれる。

 心理やカウンセリング、サイコセラピーについての本は次々と出版される。あらたな理論もどんどん作られる。だがしかし、この本ほど、実践面から語られる本はほとんどない。それにはいくつかの原因がある。ひとつはクライエントのプライバシーの保護、カウンセラーには守秘義務があり、また、最近では個人情報保護法の徹底が進んでおり、万が一、治療例が具体的に誰か、ということを推測できるような表現のしかただと、第三者への情報漏洩ともなるが、もっとも被害が大きいのは、クライエント本人への影響だ。

 だから、ここに書かれているものは、そうとうに脚色されているだろうと思われる。実際には、具体的なクライエントは隠されていながら、質問者のカウンセラーのひとりひとりの名前を明記することによって、よりリアリティが出されている。このくらいのケースを列挙するだけなら、それほど難しいこともでもない。カウンセラー歴20年程度の私でもこのくらいのケースは挙げることができる。

 しかし、それでは私の場合は、誰のことについて語っているかは、意外に簡単に割れてしまう。すくなくともクライエント本人は気づくだろう。ところが、河合隼雄氏のケース数は、それは想像を絶するほどの量になるはずだ。その中から、ほんの一例、あるいは、とくに頻発する具体的ケースを紹介にしているに過ぎないだろう。

 研究者や専門家となると、実践を離れ、より絞ったケースしか受けなくなるものだが、彼は違う。そして、もちろん手を抜くことなく、しかもパターン化した治療方法に偏ることなく、クライエントひとりひとりに、まんべんなく心を開いていく姿がありありと見えてくる。

 この本で大事なことは、いくつかある。彼は常に実践者であることの大事さを説いている。母性、父性の大切を説く。スクールカウンセラーや、産業カウンセラーという現場においての実践の大切さを説く。そしてユング心理学の素晴らしさで締めくくる。彼には彼の出会いがあり、彼には彼の仕事があり、彼には彼の人生があった。すばらしい人生であったし、彼の切り開いた平地には、多くの後続のカウンセラー達が立ちうる大きな可能性がひろがった。

 さて、彼の話に感動しながらも、あえて私の率直な感想をメモしておくと、母性・父性のカウンセリングを超えて、友情のカウンセリングもあるのではないか、ということ。もちろんその場合、カウンセリングという技法から次のステップが考案されなくてはならないのではないか、と思われる。これはこれからのこのブログのテーマでもある。

 さらに、現場の大切さはもっともなことだが、「治療」という言葉にこだわり「病」にこだわる姿勢には、違和感をもつカウンセラーも多いに違いない。

心理療法では「治療」という言葉を使うのはやめたらどうかと言うひともいます。「われわれは人の健康的な成長のためにやっているんだから、治療ではない」というわけですが、しかし、それはとても甘い考えだと思います。はっきり言って、そういう考えなら、心理療法は、やめるべきでしょう。 p163

 まさに河合隼雄の「父性」の面目躍如というところで、もちろん、この文の前後においての「母性」の発揮も忘れてはいない。彼は彼のしごとをしたのであり、そのことに何の異論もない。しかしながら、また、他の人には他の人の人生があり、私には私の人生がある。

何度も自分の資質に懐疑的になることはあっても、一本の筋だけはずっと通っているもので、私の場合、それはユングの理論です。これまでにも、壁にぶち当たることはあっても、「もうユングではやっていけないのではないか」と思ったことはありません。 p208

 そのお気持はごもっともなことだとお察しもうしあげます。私もそうありたいと思う。私の場合は、それはOshoになるわけであり、Oshoの道は、決して「病」と向かい合い「治療者」として生きる道ではないが、この著者に啓発されることは限りなく大きい。

お医者さんの場合、かなり技術的な要素がありますが、心理療法の場合、本質は禅の世界に近いのではないかとさえ思います。 p210

 「無為して、治まらざることなし」という老子の言葉を引き、第一章から「私の真理療法の考えは中国古代の思想家、老子と重なるところが大きいです。」p22と彼がいうとき、彼がどんな人生を送られただろうと、私がこれからどんなことをするだろうと、見ている世界にさほどの違いがないことに安堵する。





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Last updated  2009.03.30 08:18:33
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