「図説ユング」
自己実現と救いの心理学
林道義・著 1998/6 河出書房
小
さな本だが、前頁アート紙にカラー印刷された、とてもきれいな一冊。「ユング心理学の入門書や解説書は無数と言っていいほどに出ている」p126ということだが、ユングの人生を伝記のような形で読んだのは初めてだった。先日読 んだ
「瞑想とユング心理学」
以来、どことなくユングのほうに引かれる。
無
意識体験は、とくに神体験は、本人が望んでも望まなくても、まさに「向こうから現れて来る」ものだからである。「神はやって来る。思いもよらない姿で」ということこそ、ユングの無意識探求の結論であった。
p53
フロイトの夢判断もそうであったが、ユングにおいても、夢は大きなテーマとして取り上げられている。特にユングの場合は、自分自身の夢そのものが大きな意味を持っていた。それを多くの図版として残している。一枚一枚が美しい。もともとはインドのリンガを連想するような突起物であったり髭を生やした老人と美少女だったりしたが、次第に、上下左右対称を多く用いた幾何学模様も多く描くようになった。ユング自身が科学的な探求者でもあったが、同時にまた神秘家でもあった。
ユ
ングは心霊現象や超心理学現象に対して非常に強い好奇心を示し、それを科学的探究の対象にすることに野心を燃やしていた。ユングは狭い意味での医学の勉強よりも、こうした時代の関心事である非合理的な現象に興味を持ったのである。しかし、それを研究する方法はあくまでも合理的でなければならない、というのがユングの基本的な考え方であった。
p24
フロイトと出あったのは、今年から丁度100年前、1907年、フロイトが51歳、ユングは32歳であった。年齢的な関係や、社会的な活動歴から、二人の間には、父と子、ともいうべき関係があったとされる。本人達もそういう意識を持っていた。フロイトは、ユングを自分の仕事の第一の後継者と考えて、それぞれに要職につけたが、兄弟子アドラーとフロイトの葛藤などを見ながら、フロイトには距離をおいて活動するようになっていった。
ユ
ングについては、これからも何回か触れることもあるだろう。マンダラパターンや、インド哲学や、チベット密教、「死者の書」などについては、このブログでは不可避的みちゆきである。UFOなどについての積極的な取り組みもユングの魅力である。本書は、「図説」とあるだけに、図版がいっぱいあって、とてもカラフルにユングの伝記や業績に触れることのできる好著である。
<異説>親鸞・浄土真宗ノート 2009.03.15
意識は科学で解き明かせるか 2009.03.14
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