地球人スピリット・ジャーナル1.0

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2007.07.31
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「<スピリチュアル>はなぜ流行るのか」
磯村健太郎 2007/03 PHP研究所 新書 206p
★★★☆☆

 「スピリチュアル」が流行っている、と言われても、まともにそのテーマと取っ組み合いの格闘している本は、それほど多くない。みずからの活動をスピリチュアルということによって粉飾していたり、あるいは他人の活動をスピリチュアルといっては揶揄する。曖昧な概念のままこの言葉は独り歩きしている。

 私は、この言葉の使い方として、一番すっきりしているのは、あるSNSで(っていうかorkutだが)自分のプロフィールを書くとき、宗教という欄があって、その選択肢に「信じてはいないがスピリチュアル」がある、というところだと思う。極端な無宗教や無神論者は、現代ではあまり流行ってはいないのではないだろうか。

 まず、日本人は、お互いに付き合うときに「宗教」を尋ねたりはしない。一部のS会だとか、E証人だとかになれば、これは生活様式が多少違ったりするかもしれないので、多少気になるが、長期に渡って共同生活でもしない限り、それほど面倒なことにはなるまい。

 最近、セカンドライフの日本人居住区の禅寺というヴァーチャル空間で、着物姿のドイツ女性と会話をした。彼女はカソリックだけども、インドにも関心があり、また日本の禅にも関心があるという。私もまがりなりに禅宗に連なるお寺が菩提寺の家に生まれているので、一応、宗教は「仏教」ということになる。だが、彼女「カソリック」、私「禅」、などと、区割りを決めて付き合っていかなくてはならない、とは思わない。あえていうなら、二人は「スピリチュアル」でひとつのカテゴリに共生することができる存在である、と確認した。

 つまり現代では「宗教は信じていないけど、スピリチュアル」と自称することが、一番Coolなのだよ。orkutの中では、こうプロフィールに書いている人は相当数いる。というか私の友達はほぼこれだ。ここでのポイントは、「自称」というところにある。「あいつはスピリチュアルだ」などと「他称」されても意味はない。スピリチュアルな奴だ、というレッテルになにか意味があるだろうか。あいつはS会だとかE人だとかいうと、それはある程度レッテルとして機能する。しかし、自称スピリチュアルは、言っている意味はほんわかとわかるが、曖昧な部分は曖昧なまま、ぼかしたまま何事かを表現することに成功していると思う。

 本書「〈スピリチュアル〉はなぜ流行るのか」にも、
「なぜ」 が入っている。ブライアン・コバートによれば 「表面には現れない『なぜ?』を見つけるのが真実を見つけるということなのです」と いうことになるが、本書の場合、どうだろう。 「日本はなぜ世界で一番クジラを殺すのか」 の場合は、「世界」も「クジラ」も「日本」も「殺す」も 、外側にある客観視できる問題だ。外側に「真実」を求めるなら「なぜ?」と問いかけ続けることもできる。しかし、内面の世界となると、「なぜ?」という問いかけは、必ずしも「真実」を求めるための方法論としては最良とは言いがたい。

 本書が「〈スピリチュアル〉はなぜ流行るのか」というスタンスにあるかぎり、「スピリチュアル」は外的なものであり、「流行」もまた外的なこととして留まる。問いかけとして、もうすこし進むなら、「私はなぜ<スピリチュアル>と自称するか」というテーマになるはずなのだ。ところが本書は、まだまだ外的なガラクタ集めにやっきとなり、整合性のない、つぎはぎだらけの情報と論理の中で途方にくれているかのようだ。

 <スピリチュアル>というキーワードを中心に、本を一冊書いたり、批判したり、あるいは人に接したりする(たとえばカウンセラーと称して)ことは、それほど難しいことではない。だけど、本当の意味で<スピリチュアル>であることとは、まったく意味が違う。

 本書は、ニューエイジや精神世界、スピリチュアル・コンベンション(略してすぴこん)、麻原集団から、シャーリー・マックレーン、村上龍まで、さまざまなごった煮となっている。はっきり言って気持ち悪くなる。できるだけこういう本は読まないほうがいいと思うが、自分や、自分がかかわっている状況について、変なことが書かれていないことを確認するためには、一応チェックしておかなくてはならない。

 外側のジャーナリズムとしては、結局はこんなことしか書けないのだから、そういう意味ではまずまずまとまっている一冊というしかない。しかし、これでは<スピリチュアル>の本質にはたどり着かない。「彼ら」に関する外側のジャーナリズムを超えるエネルギーを、「私」の内側の探索に向けないと、<スピリチュアル>は見えてこない。



2007/10/26<再読>





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Last updated  2009.02.10 08:59:45
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