前置きが長くなり過ぎてしまったが、『この世はすべてショー・ビジネス(EVERYBODY'S IN SHOW-BIZ)』である。本作は、1972年発表の、レコードでは2枚組だったアルバムだ。現行のCDでは1枚にまとめられている。「セルロイドの英雄」という編集版向けにも有名な曲が含まれているので、タイトルを聞いたことがある人は意外に多いかもしれない。確かに、「セルロイド~」も名曲なのだが、他に聴きどころがないわけではない。というかまったくその逆で、メリハリの利いたビートの曲と哀愁漂うナンバーがほどよく配置され、全体を通したストーリーとして聴くけば、まさしく名盤の名にふさわしいのである。よく言われることだが、ノリのいい曲にもどこか哀愁が漂うのは、イギリス的キャラのなせる業か。
さらに、このアルバムを「お得」と表現した理由がある。それは、LPで2枚目にあたる部分(CDでは11曲目以降)だ。こちらは、ニューヨークはカーネギー・ホールでのライヴ録音になっている。この部分は少し前のアルバムの曲中心。つまり、キンクスが「(セールス)低迷期」=「(マニア的には)最盛期」の楽曲がライヴで再現されている。そんなわけで「お得」なのである。これを聴いて「マスウェル・ヒルビリー」が気に入れば、『マスウェル・ヒルビリーズ』に手を伸ばすのもよし。「ローラ」(ボーナス・トラックを除けば最後の曲)を気に入れば、『ローラ対パワーマン,マネーゴーラウンド組第1回戦』に発展していくのもよし。「ブレイン・ウォッシュド」や「マリーナ王女の帽子のような(She Bought A Hat Like Princess Marina)」(ボーナス・トラック)がよければ、『アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡』
1. Here Comes Yet Another Day 2. Maximum Consumption 3. Unreal Reality 4. Hot Potatoes 5. Sitting In My Hotel 6. Motorway 7. You Don't Know My Name 8. Supersonic Rocket Ship 9. Look A Little On The Sunny Side Celluloid Heroes
~以下、LP2枚目(ライブ)~ 11. Top Of The Pops 12. Brainwashed 13. Mr. Wonderful 14. Acute Schizophrenia Paranoia Blues
16. Muswell Hillbilly 17. Alcohol 18. Banana Boat Song (Trad.) 19. Skin And Bone 20. Baby Face 21. Lola
22. Till The End Of The Day [bonus track] 23. She Bought A Hat Like Princess Marina [bonus track]