音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2009年08月31日
XML
テーマ: Jazz(2003)
カテゴリ: ジャズ




 「お洒落な音楽」としてジャズを聴くのは許せないと言うジャズ愛好者も多いのではないかと思う。ビル・エヴァンスの 『ワルツ・フォー・デビイ』 などはそうした話題の代表格としてよく挙げられる。要は、奥深いビル・エヴァンスの名演を「洒落たBGM」扱いするのは許せん、と言うわけである。

 けれども、そうした「お洒落な音楽」扱いされることで門戸が広がり、確率はさほど高くないとしても、それによってビル・エヴァンスを好きになるきっかけを掴む人もいるはずだ。21世紀を迎えた現在、ジャズがマニアや愛好家だけの音楽に留まるよりは、もっと大衆化され、いろんな聴かれ方や楽しまれ方をいいのかもしれないと筆者は思う。つまるところ、博物館に送り込まれて「時代の遺産」のようにして展示されるのではなく、実際に使い続けられる道具や工芸品のように「生きたもの」であった方がいいように思うのである。

 そのような観点から、シェリー・マン名義の本作『マイ・フェア・レディ(My Fair Lady)』は、現代の聴き手にもっと大々的に売り出されてもいい作品だと思う。そもそも本盤の成り立ちには次のような経緯がある。1956年にブロードウェイで同名のミュージカルが上演され、その主演を務めたジュリー・アンドリュースの歌唱によるサウンドトラック盤が好評を博した。その人気がジャズ界にも飛び火し、本盤『マイ・フェア・レディ』としてジャズ化され、ヒットした。冒頭の話に戻れば、ミュージカル(およびそのサントラ)の"二番煎じ"あるいは"二匹目のドジョウ"が本盤のそもそもの由来だったわけで、それを再び大衆化して何が悪いものか。そう言われたら、ジャズ・ファンは返す言葉もない。

 さて、このアルバムのジャケットに記された名義は"Shelly Manne & his Friends"となっている。それでもって、"Friends"の右上に注釈のアステリスク(*印)がついていて、ジャケ右下の端っこの方に小さく"*Andre Previn and LeRoy Vinnegar"と記されている。実際に演奏を聴くと、なるほどアンドレ・プレヴィンのピアノが大きな役割を担っている。もちろん、シェリー・マンの役割も大きいし、リロイ・ヴィネガーの重要性も低くはない。スインギーで、ドラマティックなピアノ演奏、さらにはそのピアノを盛り立てて乗せていくドラムとベースが実にスリリングな演奏に仕上げているピアノ・トリオ盤である。

 このスリリングさに集中して聴くと実に素晴らしい1枚であることは言うまでもないだろう。けれど、一歩立ち止まって、落ち着いて考えてみると、ヴォリュームを下げて、「お洒落なジャズ・ミュージック」という聴き方もされていいのかもしれないともふと思ったりする。ビル・エヴァンスを聴いて「ジャズっていいかも」と思った人が、次にマイルスを勧められて、コルトレーンを勧められて…だんだんよくわからなくなる。いや、そこでマイルスやコルトレーンを聴いて目覚め、新たな楽しみを見出す人もいるのだろうけれど、そこで尻込みして、「もうジャズなど聴くものか」と去っていく人も相当数いるはずだ。そんな時、もうしばらくの間、「お洒落な音楽」としてジャズに親しむということがあってもいいかもしれない。そしてそういう時にもっと勧められ、なおかつ売り込まれていいアルバムの一つが『マイ・フェア・レディ』なのではないかと思う。


[収録曲]

1. Get Me To The Church On Time

3. I've Grown Accustomed To Her Face
4. Wouldn't It Be Lovely
5. Ascot Gavotte
6. Show Me
7. With A Little Bit Of Luck
8. I Could Have Danced All Night


[パーソネル、録音]

Shelly Manne (ds), Andre Previn (p), LeRoy Vinnegar (b)

録音:1956.8.17






[枚数限定][限定盤]マイ・フェア・レディ/シェリー・マン[CD]【返品種別A】








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2016年02月19日 07時11分15秒 コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: