本作でバックを務めるクレイジー・ホースとニール・ヤングの付き合いは長く、ニールがソロ転向後2枚目となるアルバム『ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース(原題:Everybody Knows This Is Nowhere)』(1969年リリース)がその始まりである。当時のクレイジー・ホースは、ダニー・ウィットン(ギター)、ラルフ・モリーナ(ドラム)、ビリー・タルボット(ベース)の3人であったが、その後変遷があり(ダニー・ウィットンは1972年に死亡)、本作でのクレイジー・ホースは、上記のダニーの部分がフランク・“ポンチョ”・サンペドロ(ギター、オルガン)に入れ替わった編成である。本盤のリリースが1994年であるので、クレイジー・ホースとはこの時点で既に25年(四半世紀!)もの長い関係ということになる。こうした経緯もあり、本盤においても演奏の息はぴったり合っていて、本盤の演奏面での一つの特徴となっている。
他方、一般的には、クレイジー・ホースとの組み合わせでのニールは“激しい”演奏のイメージがある。本盤でのその片鱗もなくはない(例えば7.や11.の演奏)。しかし、それを過剰に期待して聴くと、アルバム全体としてはあまりに印象が違うために、“はずれ”と感じかねない。だが、本盤のよさはそういった“激しさ”にあるのではないと感じる。路線としては、『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』(1970年)や『今宵その夜(Tonight’s The Night)』(1975年)といった、クレイジー・ホースとは組んでいなかった作品の延長線上に位置づけられるような色調のアルバムで、そのイメージを持って聴くと、すんなり入ってくるように思う。