EL TRI(エル・トリ、関連過去記事(1)、(2))はメキシカン・ロックのパイオニアにして現在も活躍する大御所バンドである。1994年にリリースされた本作『ミヌスバリドス(Una rola para los minusválidos)』は、先駆者的な活動から、国内産ロックというものがメキシコに定着しベテランバンドへと移っていく時期の1枚である。
他のアルバム同様、社会批判や社会風刺の曲も相変わらず痛烈で、ちょうどこの年にメキシコ南部で武装蜂起したEZLN(サパティスタ民族解放軍)を歌った4.「レボルシオン ‘94(94年の革命)」、このアルバム制作の少し前に暗殺された大統領候補(当時の与党、制度的革命党のコロシオ候補)を取り上げて社会の不安定と社会正義の不在を歌った10.「コン・ラ・コラ・エントレ・ラス・パタス(脚の間に尻尾を隠して)」のような曲も含まれている。他方、メキシコ人性を強調した7.「いちばんイケてる人種(La raza más chida)」では“俺たちメキシコ人の体はテキーラとメスカルでできている”と明るい詞でありながら、ここでも“自分の運命を自嘲できるのは俺たちメキシコ人だけ”と風刺的な詞を紛れ込ますことも忘れていない。
1. Todo es materia 2. Perdedor 3. Trabaja, niño, trabaja 4. Revolución 5. La puerta falsa 6. Los minusválidos 7. La raza más chida 8. Las piedras rodantes 9. Siempre he sido banda 10. Con la cola entre las patas