音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2010年10月27日
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相変わらずの社会風刺+名曲2曲の好盤


 EL TRI(エル・トリ、 関連過去記事(1) (2) )はメキシカン・ロックのパイオニアにして現在も活躍する大御所バンドである。1994年にリリースされた本作『ミヌスバリドス(Una rola para los minusválidos)』は、先駆者的な活動から、国内産ロックというものがメキシコに定着しベテランバンドへと移っていく時期の1枚である。

 アルバム・タイトルは直訳すると『身障者に捧げる曲』の意味で、6.「ミヌスバリドス」はそうした人々も社会生活を他の人たちと同じように送れるよう願いを込めたもの。現在の日本社会から見れば陳腐なテーマに見えるかもしれないが、この当時のメキシコは、例えば車椅子で街に出ることなどはかなり困難な状況だったことを考えると納得のいくテーマである。ジャケットの裏側にもバンドのリーダーであるアレハンドロ・ローラが心身の不自由な人々に捧げる旨のメッセージが記載されていて、EL TRIのコンサートでもそうした人々を招待するなどという活動もしている。

 他のアルバム同様、社会批判や社会風刺の曲も相変わらず痛烈で、ちょうどこの年にメキシコ南部で武装蜂起したEZLN(サパティスタ民族解放軍)を歌った4.「レボルシオン ‘94(94年の革命)」、このアルバム制作の少し前に暗殺された大統領候補(当時の与党、制度的革命党のコロシオ候補)を取り上げて社会の不安定と社会正義の不在を歌った10.「コン・ラ・コラ・エントレ・ラス・パタス(脚の間に尻尾を隠して)」のような曲も含まれている。他方、メキシコ人性を強調した7.「いちばんイケてる人種(La raza más chida)」では“俺たちメキシコ人の体はテキーラとメスカルでできている”と明るい詞でありながら、ここでも“自分の運命を自嘲できるのは俺たちメキシコ人だけ”と風刺的な詞を紛れ込ますことも忘れていない。

 そうした風刺性はスロー~ミドルテンポの次の2曲に集約されている。2.「ペルデドール(負け犬)」と8. 「ピエドラス・ロダンテス」 は、地味ながらも本盤を代表する曲で、なおかつ後々のライブなどでも必ず演奏される名曲である。

 2.の方は“人生何をやってもうまくいかない”、“いつも負け犬だった”主人公が道端に座って都会の風景の断片を歌うという情緒的な内容の詞である。大通りを流れるバスやタクシーを見つめながらこれらの交通機関に乗る人たちを“皆がもうすぐ無事に到着するという確信を持った顔をした大勢の人”と描写し、人生うまくいかない人と都会生活を忙しく送る人との対比を示しながらも、慌ただしく人が溢れた都会での公共交通の不安性をさりげなく風刺する(日本でも鉄道や突発的交通事故が起こるたびにこの詞が思い起こされる)。






[収録曲]

1. Todo es materia
2. Perdedor
3. Trabaja, niño, trabaja
4. Revolución
5. La puerta falsa
6. Los minusválidos
7. La raza más chida
8. Las piedras rodantes
9. Siempre he sido banda
10. Con la cola entre las patas


1994年リリース。




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