まず、ネーム・ヴァリューからしてまず目を引くであろうは、エリック・クラプトン率いるパワーハウス(Eric Clapton & The Powerhouse)である。編成は、ギターのクラプトンのほか、ヴォーカルのスティーヴ・ウィンウッド、ウィンウッドと同じくスペンサー・デイヴィス・グループで一緒だったピート・ヨーク(ドラム)、さらには、マンフレッド・マンのポール・ジョーンズ(ハープ)、ピアノのベン・パルマーといった顔ぶれ。録音は66年3月ということだから、クラプトンがジョン・メイオールのグループ(ブルース・ブレイカーズ)で行った、“神”と呼ばれることになる演奏と、クリームの結成の狭間の時期にあたる。もう少し深読みすれば、スティーヴ・ウィンウッドとの組み合わせなんかは、後のブラインド・フェイスの布石という感じもして面白い。
次に、というか本盤でもっとも出色の出来を披露しているのが、ポール・バターフィールド・ブルース・バンド(The Paul Butterfield Blues Band)である。このバンドは前年の65年にデビュー盤を発表し、同じ66年(マイク・ブルームフィールド在籍期)には、名盤『イースト・ウェスト』を発表している。米国ブルース・ロックの主流を作った、今となっては伝説のバンドである。参加アーティスト中で最多の5曲が収録されているが、いちばん目を引くのが、3.「スプーンフル」だろう。ウィリー・ディクソン作のブルースのスタンダード・ナンバーであるが、上記クラプトンがクリームのデビュー作で取り上げる前にバターフィールドがここで取り上げていて、スリリング極まりない好演を披露している。他の曲も触れておくと、4.「オフ・ザ・ウォール」は、リズムのキレとハープの流暢さで聴かせるインストのブルース曲。8.「ラヴィン・カップ」はポール・バターフィールドのオリジナル曲で、これまたスリリングでとにかくカッコいいブルース・ロックに仕上がっている。9.「グッド・モーニング・リトル・スクールガール」は、ソニー・ボーイ・ウィリアムソンIの曲で、勢いのある演奏。逆に14.「ワン・モア・スマイル」は、まったり感を含めギターとヴォーカルの掛け合いがいい味を出している演奏である。
もう一組の参加アーティストは、アル・クーパー。5.「泣かずにいられない(Can’t Keep From Crying Sometimes)」1曲のみの参加だが、この時期のロック界の様々な動きの陰にしょっちゅういた仕掛け人がこのアル・クーパーであった。ブルース・プロジェクトの別ヴァージョンだが、オリジナル曲でさらりとこんなブルース系ナンバーを披露してしまうあたりは、その才能を再認識させられる。
[収録曲]
1. Good Time Music / The Lovin' Spoonful 2. Almost Grown / The Lovin' Spoonful 3. Spoonful / The Paul Butterfield Blues Band 4. Off the Wall / The Paul Butterfield Blues Band 5. Can't Keep From Crying Sometimes / Al Kooper 6. I Want to Know / Eric Clapton and the Powerhouse 7. Crossroads / Eric Clapton and the Powerhouse 8. Lovin' Cup / The Paul Butterfield Blues Band 9. Good Morning Little Schoolgirl / The Paul Butterfield Blues Band 10. Steppin' Out / Eric Clapton and the Powerhouse
12. Don't Bank on it Baby / The Lovin' Spoonful 13. Searchin’ / The Lovin' Spoonful 14. One More Mile / The Paul Butterfield Blues Band