音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2012年02月16日
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テーマ: Jazz(2004)
カテゴリ: ジャズ




 ズート・シムズは1925年生まれの米国のテナー奏者(後にソプラノ・サックスも演奏)。彼の代表的な盤はいくつかあるが、そのうち、1961年の渡欧の際にパリで吹き込まれたのが本盤『ズート・シムズ・イン・パリ(Zoot Sims in Paris)』。白人テナーのワンホーンで、スウインギーな演奏で知られるズート・シムズだが、この盤はよりリラックス度の高い1枚である。とりわけ代表盤としてよく言及されるの 『ダウン・ホーム』 や『ズート』あたりのイメージで激しくスイングしたノリのいい演奏を期待すると、本盤については、いくらか肩透かしを食らうかもしれない。いや、別に全然スイングしていないとか言うつもりなのではない。でもゆとり度とくつろぎ感が上記代表作に比べるとだいぶ強いというのが、本盤の全体としての印象なのである。

 “ゆとり”というと、“ゆとり世代”とか、近頃ではよくない意味に使われてしまったりもするのだけれど、本盤でのゆとりとくつろぎはもちろんいい意味においてである。外国へ演奏旅行に出かけ、現地のミュージシャンを交えながら演奏を繰り広げる。こういう行為は、演奏者やその時の状況によっては“外での勝負”といった感じになって緊張感が高まる場合も多いだろう。ところが、この盤でのズートの演奏は、その真逆なのである。確かにアンリ・ルノーとは過去にも共演していて、心が通っていたのかもしれない。そうは言っても、普段とは違った雰囲気の、異なる気質の観客の中でこのリラックスした演奏が繰り広げられたからこそ、こんないい盤になった。

 では、そのゆとりとくつろぎの源はどこにあるのだろうか。思い当たる理由を考えてみたい。

 1つは、何と言ってもそのメンバー編成にあると思う。アンリ・ルノーを中心としたリズム・セクションの安定した演奏ぶりである。ベースのボブ・ホイットロックとドラムのジャン・ルイ・ヴィアールは真面目に地道に演奏に勤しんでいる。アンリ・ルノーはというと、欧州らしい知的で洒落たフレーズを随所で披露する(本盤では例えば3.や5.の演奏が個人的には好み)。この人は演奏家としてだけでなく、プロデューサーとしても活躍した人で、演奏からも洗練された知性のようなものが漂ってくる。

 2つめとして、演奏曲目の工夫もあるだろう。ズート作のブルース2曲(1.と7.)が演奏曲目に入っているが、全体としては圧倒的にスタンダード中心の選曲になっている。そしてこの点と関係するのだが、3つめとして、ズートが勢いよく吹くのではなく、落ち着いて聴かせることにより比重を置いた演奏を展開していることである。

 ズート・シムズは革新的なことをしたというよりも、頑なに己のスタイルを堅持したジャズ・ミュージシャンと言われる。白人テナーとして、レスター・ヤングの流れを組む演奏家と言われるが、確かにズート・シムズの最たる特徴は、曲を歌いあげ、聴き手を楽しくさせる、あるいはなごませることにあったのだろう(こういう観点からすると、本盤の4.や9.は外せない曲目である)。暖かなトーンでくつろぎを感じさせる本作は、ズートの代表作を1枚だけ挙げる時には出てきにくいが、彼の代表作を複数枚挙げる時には、きっと外せない1枚になると思う。

 余談ながら、本盤の録音場所はパリの“ブルーノート”となっているが、一説では、映画の撮影用のセットに観客を入れてライブ録音風にしたという。まあ、観客に“聴かせる”というズートの姿勢からすれば、どんなセットなのかは関係なかったのかもしれないけれど(笑)。




1. Zoot’s Blues
2. Spring Can Really Hang You Up The Most
3. Once In A While
4. These Foolish Things
5. On The Alamo
6. Too Close For Comfort
7. A Flat Blues
8. You Go To My Head
9. (Stomping at the) Savoy


[パーソネル・録音]

Zoot Sims (ts)

Bob Whitlock (b)
Jean-Louis Viale (ds)

1961年録音。







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Last updated  2012年02月16日 11時13分37秒 コメント(1) | コメントを書く


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