1969年にデビュー作を発表し、1971年の第3作でプログレッシヴ・ロック・バンドとしての完成を見たイギリスのバンド、ジェネシス(Genesis)。1975年のピーター・ガブリエル脱退の後、1980~90年代には、フィル・コリンズを中心に第二の黄金期を迎えることになるが、本盤『月影の騎士(Selling England by the Pound)』は、70年代の最初のバンド全盛期の1973年のリリース。翌年にリリースされた『ザ・ラム・ライズ・ダウン・オン・ブロードウェイ』と並んで、ジェネシスの黄金期を代表する盤と言えると思う。
まずはアルバム表題(邦題『月影の騎士』、原題『Selling England by the Pound』)を見て、この原題と邦題の違いは何がどうなっているのか、と思う人もいるかもしれない。けれども、邦題は1.の曲名に含まれる“月影の騎士(Moonlight Knight)”から採られたもの。それが原題と関係ないのかというと、そうではなくて、『Selling…』という原題も実は同じ1.の歌詞に登場する文言である。つまり、原題と邦題はまったく異なるけれども、いずれも収録曲1.に絡んで名付けられているということになる。