音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2015年09月21日
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テーマ: Jazz(2003)
カテゴリ: ジャズ

賛否両論の代表盤


 チック・コリアは1941年生まれのジャズ・ピアニスト。マイルス・デイヴィスのグループの活動などを経て1972年に発表したのがこの『リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return To Forever)』で、彼の代表作として紹介されることも多い。

 彼個人の名義で発売されたものの、実質としては、スタンリー・クラーク(ベース)らとともに結成したグループの作品という方がいい(実際、その後は“リターン・トゥ・フォーエヴァー”をバンド名として活動することになる)。大きなセールスを獲得するとともに、従来のジャズ愛好者からは賛否両論が巻き起こったアルバムである。

 1970年代初頭のこの段階で、ジャズが大きく転換していたことは確かであろう。一般に本盤は“フュージョン時代の先駆け”などと言われるが、60年代までのジャズの“伝統”を踏まえて、その上での新たな一歩だったというのは確かにそうなのだろう。つまるところ、いきなり聴きやすい音楽をやった、というわけではなく、フリー・ジャズの時代を経て“美しさ”への探求の結果、チック・コリアがたどり着いた一つの境地がこれだった。

 上記の“美しさ”と並んで大きな特徴としては、“夜の音楽”としてのジャズがすっかり変容し、本盤の楽曲と演奏は“昼間”のカラーに溢れているという点であろう。朝や日中を思わせる明るさや爽やかさが全体としては支配的である。形式から解き放たれ、予定調和ではない展開を試み、ある種のジャズ・ルネサンスだったという人もいる(個人的にはルネサンスという表現は違うと思うけれど)。

 全体を通して聴くことが一義なのだろうけれど、聴き逃せないのは“永遠回帰”を意味する表題曲の1.「リターン・トゥ・フォーエヴァー」。美しさと同時にどこを彷徨うのかわからない感覚の虜にされてしまう。それから外せないのは、4.「サムシング・アゴー~ラ・フィエスタ」。20分越えの長尺だけれど、リラックス感と美しさの調和、そしてこのメドレーを通しての演奏の展開が実に魅力的で、特に後半の「ラ・フィエスタ」は曲調も素晴らしい。

 正直、個人的にはフュージョンやクロスオーバーといった括り方をされる音楽は得意ではない。それでもなお、チック・コリアのこの盤はジャンルとしての好き嫌いと関係なく名盤だと思う。スウィングしない、形式を外れたこんなジャズがあってもいい。たまにしか聴かないけれど、その“たま”の時間が案外至福の一時だったりするといった具合なのである。




[収録曲]

1. Return to Forever

3. What Game Shall We Play Today
4. Sometime Ago - La Fiesta


[パーソネル・録音]

Flora Purim (v, perc)
Joe Farrell (ss, fl)
Chick Corea (el-p, Fender Rhodes)
Stanley Clarke (b, el-b)
Airto Moreira (ds, perc)

1972年2月2~3日録音。







【RCP】[枚数限定][限定盤]リターン・トゥ・フォーエヴァー/チック・コリア[CD]【返品種別A】






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Last updated  2015年09月21日 08時53分10秒
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Re:チック・コリア 『リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return To Forever)』(09/21)  
Voyager6434  さん
こんばんは☆

マイルスの『ビッチェズ・ブリュー』と同様に
本作も「コレを聴け」という流れで聴いた一枚でした~

「4バース」も無ければ増してスゥイングもしていない。

様式を重要視する権威主義的ジャズ演奏家からしてみれば
許せない様な音楽だったと思いますが

ジャズ初心者の時 イキナリこれを聴いた時は、掴みどころが無くて
当惑した覚えがあります

なので、この後マイルスの「カインド・オブ・ブルー」を聴いた時
意外と聴き安く感じたのが 不思議に思ったものでしたW~(・∀・)


(2015年09月22日 20時49分22秒)

Re[1]:チック・コリア 『リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return To Forever)』(09/21)  
andale  さん
Voyager6434さん

レスポンスが悪くて申し訳ありません(連休を休んでいたわけではなく、働いて疲れています)。

「権威主義的ジャズ演奏家からしてみれば許せない様な音楽」は、「権威主義的ジャズ愛好者」から見てもきっと同じなのでしょうね。

「ルネサンスという言い方は違う」と書きましたが、個人的に「ルネサンス」で括られる絵画や芸術作品の本質は「躍動感」にあるという気がしています。チック・コレアのこれは異なる方向ですよね。躍動感いっぱいのジャズの概念を違う方向にもっていったというか、柔らかくすることや予想を裏切ることでのでの革新というか…。
(2015年09月24日 20時03分48秒)

Re:チック・コリア 『リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return To Forever)』(09/21)  
susuto3089  さん
グルーブ感あって軽快なノリは聴いてて爽快です、
音楽にこれ以上もとめるものはありまん、
素晴らしい (2015年09月30日 11時26分10秒)

Re[1]:チック・コリア 『リターン・トゥ・フォーエヴァー(Return To Forever)』(09/21)  
andale  さん
susuto3089さん
「軽快なノリ」は、それがすべてかどうか、あるいは旧来のジャズの愛好者が受け入れるかどうかはともかく、重要な要素ですよね。
なんだかパット・メセニーがいいかどうかなんてのも、同じキーワードで括れてしまいそうな気もします。
(2015年09月30日 19時21分54秒)

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