音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2016年06月27日
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 バンドが成熟し、大衆の人気も得ると、維持するのが難しくなっていくというのは、ある程度避けがたい問題なのかもしれない。 『シュールリアリステック・ピロー』 でカウンター・カルチャーの代表とみなされた後も、ジェファーソン・エアプレインは何年にもわたってトップ20にチャートインするアルバムを出し続けた。順に挙げてみると、『アフター・ベイジング・アット・バクスター』(1967年)が17位、『創造の極致』(1968年)は全米6位。続く1969年のライヴ盤と 『ヴォランティアーズ』 は、それぞれ17位と13位。70年代に入り、 『バーク』 (1971年)は全米11位で、本作『ロング・ジョン・シルヴァー(Long John Silver)』(1972年)が全米20位という訳なので、セールス的に悪くはない。

 この間、いろんな意味で時代は急速に流れていた。サイケの時代は過ぎ、ベトナム情勢は変化、政治的な意味で反体制の代弁者としての役割もバンドには重かった部分もあったのかもしれない。各メンバーは一体となって同じ方向を向くというよりは、そのベクトルが四方八方へ拡散していくことになった。本盤の前作に当たる 『バーク』 の制作時点では、マーティ・バリンとスペンサー・ドライデンがバンドを去っていた。ヨーマ・カウコネンとジャック・キャサディはホット・ツナにつながるユニットの活動に傾き、ポール・カントナーはグレース・スリックのソロを含むプロジェクトを進めていく。そんな状況も踏まえると、確かに、『バーク』や『ロング・ジョン・シルヴァー』は、全体のまとまりというよりは、複数の個性を組み合わせた、わかりやすい喩えでいうと、初期ビートルズよりは後期ビートルズみたいな状態になっていたことは否定しがたいと思う。

 とはいえ、この時期の成果が駄盤を生んだと言うつもりはない。それどころか、個人的には結構好きだったりする。本盤について言えば、何よりも、ジェファーソン・エアプレイン史上、これほど激しくグレース・スリックが歌うアルバムはない。曲調も全体的にハードで、本作の数年前に衝撃的な死を遂げたジャニス・ジョプリンがグレース・スリックに乗り移ったのかと思ってしまうほどの場面も随所にある。 

 個人的におすすめのナンバーは、2.「エアリー(鷲の群)」、4.「ミルク・トレイン」(ジョン・ヘンリー・クリーチのバイオリンにも注目)、9.「イート・スターチ・マム」といった曲に代表されるような、激しい演奏でグレース・スリックがヴォーカルをとるナンバー。ギターを前面に出したハードな演奏と鬼気迫る彼女のヴォーカルの絡みが、筆者としては本盤の本領発揮の場面だと思う。そして、よく聴くとその演奏の中には、 『シュールリアリスティック・ピロー』

 翌年にライヴ盤があったものの、本作は当初のジェファーソン・エアプレインの実質的には最終作となってしまった(80年代末の復活盤は こちら を参照)。実際のバンド内の状況はともかく、音楽面だけ見れば、この緊張感ある状態のアルバムをあと1枚2枚と残してほしかった。本作は、そう思いたくなるほど聴き応えのある1枚だと思う。



[収録曲]

1. Long John Silver
2. Aerie (Gang of Eagles)
3. Twilight Double Leader
4. Milk Train
5. The Son of Jesus
6. Easter?
7. Trial by Fire
8. Alexander the Medium


1972年リリース。





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Last updated  2016年06月27日 07時23分38秒 コメントを書く
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