音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2025年10月03日
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カタルーニャ人シンガーが“文学を歌う”


 スペインはカタルーニャ出身のシンガー、ジョアン・マヌエル・セラ―(Joan Manuel Serrat)の19枚目のアルバムとして1985年にリリースされたのが、本盤『エル・スール・タンビエン・エクシステ(El sur también existe)』である。セラーの有名曲の一つ 「カンターレス」 は、スペインの詩人アントニオ・マチャードの詩に音楽をつけたものとして知られているが、実はこの曲が収録されたアルバム(1969年の『詩人アントニオ・マチャードに捧ぐ』)そのものがそういうコンセプトであった。これと同様に、マリオ・ベネデッティを題材としたのが、本盤ということになる。

 マリオ・ベネデッティは、ウルグアイ生まれの小説家、ジャーナリスト、詩人で、軍政下の祖国からアルゼンチン、ペルー、キューバ、スペインへと逃れて亡命作家生活を送った。亡命生活の最後の時期に当たるのが、ちょうど本盤の頃であった。そのベネデッティの詩を題材にして音楽にのせてセラーが歌うというのが、このアルバムのコンセプトである。

 表題曲の1.「エル・スール・タンビエン・エクシステ(南もまた存在する)」は、世界におけるいわゆる南北格差が歌われており、南米出身のベネデッティならではの説得力がある。どの曲に関しても、セラーの歌唱力が生かされているが、筆者の好みでは4.「アガモス・ウン・トラート(取引をしよう)」、5.「テスタメント・デ・ミエルコレス(水曜日の遺言)」、6.「ウナ・ムヘール・デスヌーダ・イ・エン・ロ・オスクーロ(裸の暗がりの女性)」、10.「デフェンサ・デ・ラ・アレグリーア(歓喜の擁護)」なんかがいい。8.「アバネーラ」は、キューバのハバナがテーマとなっていて、これもまたベネデッティの亡命生活から生まれたテーマである。

 上述のような“文学的な”盤ながら、リリース年から翌年にかけて4曲もがシングルカットされている(発売順に6., 3., 7., 4.)。文学作品がポップやロックの曲に化けるというのは、日本語では想像しにくいかもしれないが、この辺りはやはりラテン語の流れを汲む文化圏の底力なのかもしれない。それと同時に、亡命生活にある作家の声を聴衆に届けようというシンガーとしてのセラーの心意気があって誕生した盤ということであろうか。


[収録曲]

1. El sur también existe
2. Currículum

4. Hagamos un trato
5. Testamento de miércoles
6. Una mujer desnuda y en lo oscuro
7. Los formales y el frío
8. Habanera
9. Vas a parir felicidad
10. Defensa de la alegría

1985年リリース。




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Last updated  2025年10月03日 07時49分14秒
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