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安倍政権の外交を象徴するシーンがある。2017年9月の国連での演説だ。ここで安倍総理は「必要なのは対話ではない。圧力なのです」と語り、各国に北朝鮮との対話を拒否するよう求めた。
国連という対話の場で他国を非難する場面がないわけではないが、民主国家が対話を拒否するのは珍しい。このとき、トランプ氏も演説している。そして、金正恩朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と呼ぶなど挑発しているが、実は対話は拒否していない。逆だ。 「国連での彼らの対応を見守ろう」と述べて、対話へのシグナルを送っている。
その結果も私たちは知っている。 米朝首脳会談の開催だ。安倍政権は焦っただろう。安倍総理は拉致問題で手を尽くしたかのような発言を繰り返していたが、私か米朝主脳会談前と後の2度にわたって平壌で対日政策担当者を取材した印象とは異なる。彼らは「安倍さんは本気ではないでしょう」と半ばあきらめ顔で語っていた。それが日朝外交の実際のところだろう。
では日米関係はどうだったか? トランプ氏との個人的な関係を強調していたが、 鉄鋼関税で日本側が求めた摘用除外にはならなかった。 自衛隊の装備はトランプ政権の求めるままに増えて出費は増大。その日米の個人的な関係は、日本の外交力を削いだ斜向も否定できない。 例えば、イランを訪問した際は、すでにアメリカの使者のように扱われて成果は出せなかった。 それは、日本が築き上げてきたイラン外交が途絶えた瞬間だった。
安倍総理の外交とはなんだったのか? 私は、野球に例えるなら、 打てないのに「チームの4番打者だ」と力んだバッター だと思っている。「チーム」をアジアと置き換えてもよい。その「4番」に座るために、トランプ氏からお墨付きを得る必要があった。しかし、力んでバットを振っても結果が出ないように、外交は成果を出せずに終わった。本来の日本の力、安倍総理の力量からすれば、7番か8番打者だろう。
それでもヒットを打ち、チームプレー、つまり周辺国との関係を構築できれば、3番を任されたかもしれない。メジャーリーグに渡った松井秀喜選手がチームバッティングに徹してそうなったように。チームバッティングに徹していれば、周辺国との関係を良好に保ち、拉致問題にも進展が見られたかもしれない。
しかし安倍総理は結果より「4番」にこだわった。そこに計算もあったはずだ。 外交成果は選挙で票になりにくい。ならば、「4番」として遇されているほうが選挙映えする。 支持者も喜ぶ。かくして長期政権は外交を動かす手段から目的と化した。 それが安倍外交の姿だ。
菅政権では安倍外交の継承、つまり「4番」に座り続けるしかない。菅氏は外交については「スタメン」に入るのも難しいレベルだろう。そういう打者が「4番」に座ったらどうなるのか? せめてバントの練習くらいはしてほしい。
※立岩陽一郎(たていわよういちろう)※
ジャーナリスト。1967年、神奈川県生まれ。 1991年、一橋大学卒業後、NHK入局。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクとして主に調査報道に従事。政府が随意契約を恣意的に使っている実態をリポートし、随意契約原則禁止のきっかけをつくった他、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。以後、化学物質規制が強化される。[パナマ文書]取材に中心的に関わった後、2016年12月にNHKを退職。公益財団法人政治資金センター理事、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)副理事長。現在は調査報道を専門とする認定NPOを運営し「lnFact」編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。毎日放送「ちちんぷいぷい」レギュラー。
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