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(佐藤直子)
「番組は沖縄の平和運動を愚弄(ぐろう)する悪質なフェイクニュースだった。判決は問題性を明確に示した」。1日、判決後の記者会見で辛さんはこう語った。
番組は沖縄県東村高江のヘリコプター離着陸帯建設反対運動を取り上げ、2017年1月、2回にわたり東京MXテレビで放送された。判決は「暴力や犯罪行為を含む過激な運動で、在日コリアンの辛さんはそれを裏側からそそのかし、操る人物との印象を与えている」と指摘。 辛さんへの裏付け取材がなく、根拠も乏しい番組を「真実性はない」として、550万円の賠償を命じた。
◆謝罪文掲載命令も
賠償額と併せ、弁護団が「白眉」と強調したのは、辛さんへの精神的損害は重大として、同社のウェブサイトに謝罪文の掲載を命じた点。文面は番組が事実に反して辛さんの名誉を傷つけたことを認め、おわびする内容となっている。
一方で、動画配信サイト「ユーチューブ」での番組配信の停止と削除については「表現の自由を制限することになる」として認めず、 番組司会者で本紙元論説副主幹の長谷川幸洋さんに求めた損害賠償については「番組の企画や制作、編集に関与していない」として棄却した。
とはいえ謝罪文の掲載命令に踏み込み、原告側は「画期的」と評価するこの判決。専門家はどうみるか。
名誉毀損裁判に詳しい喜田村洋一弁護士は賠償額について、「今回は高い額が出た方だと思うが、個人的にはもっと高くていいと思う。番組に真実性は認められなかったし、真実にたどりつくために懸命に取材して間違えたのなら名誉毀損とされないが、今回はそれすら認められていない。つまり、ずさんな番組で人を傷つけたということだ」と語る。
喜田村さんはまた、賠償金が企業に与える「痛手」を指摘する。「賠償金は税法の規定によって事業を営むための経費とは認められず、利益から支出しなければならない。企業の利益率が仮に5%だとすると、550万円の慰謝料を支払うために、その20倍を売り上げなければならない計算になる。これは結構大きなことです」と語る。
一方、ヘイト問題に詳しいジャーナリストの安田浩一さんは「被告の言い分が認められず、辛さんに対するヘイト被害が認められたのはよかった。しかし、沖縄に対する差別意識や偏見が映像になり、公共の電波で放送されてしまった点に今回の問題がある。この点に言及していないのは残念」と語る。
「問題は損害賠償が認められても、差別は続くことだ。一度流れてしまった差別や偏見、中傷は、それを目にした者からまた新しい差別が生まれる。差別の再生産、ヘイトの連鎖を断ち切る仕組みを社会で構築していくことが必要だ」
◆DHCテレビ側は「不当判決」と主張
辛さんは長谷川さんに対する請求の棄却などを不服として控訴する方針。DHCテレビ側もネット配信した番組で「不当判決」などと主張し、控訴の意向を示した。長谷川さんは同番組で「今後どうするかは弁護士と相談して決める」と述べている。
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