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――緊張の高まっている状態が続く尖閣諸島の問題ですが、どのように対応していけばいいのでしょうか。
河野 この点については心配していることが2つあります。
1つ目は教科書の記述を含め、学校教育の現場での領土問題の扱われ方です。
報道などによると、尖閣諸島・竹島・北方領土については、単に「日本の固有の領土である」との日本の主張のみを教えているようですが、それでいいのでしょうか。これらの領土については、いずれも国際社会では領土問題があると見られています。北方領土については現在、ロシアが実効支配していますが、戦争終結で合意した日ソ交渉では、領土問題について今後に交渉が行なわれることが了解されていますし、竹島は韓国が実効支配している状況のもと、日本は繰り返し自国の領土であることを主張しています。全く逆の立場で尖閣諸島は日本が実効支配していますが、中国はかねてから中国の領土であると主張し、日中国交正常化交渉の時もこの話が出ていたと当時の出席者は語っています。このように 領有権をめぐる双方の主張や交渉経過を含めて子どもたちに現状を正しく知ってもらい、その上で日本がこうした歴史的経過を踏まえて領有権を主張していることを伝えるべき ではないでしょうか。
もう1つは、尖閣諸島に関する現在の日本政府の対応です。日本の外務省は「領土問題は存在しない」とする立場で中国側の主張を門前払いにしています。しかし、これまでの日中間の外交交渉を振り返ってみても、このような態度でよいのか疑問に思います。1972年の国交正常化の交渉過程では尖閣諸島の帰属問題は意図的に避けられました。なぜなら、 この問題を交渉のテーブルに載せると国交正常化交渉自体ができなくなると双方が考えたから です。この過程は国交正常化交渉に関わった日本側、中国側の関係者は皆知っていることだと交渉出席者は言っています。 その後、この問題の解決は将来世代の知恵に委ねようとの鄧小平氏の発言もあって、棚上げとなりました。 国交正常化交渉に外務省の条約課長として参加した栗山尚一氏も回想録でこうした経過を語っています。こうした前提のもとで日中両国は戦争状態を終わらせて国交正常化を果たし、外交関係を積み重ねてきたわけです。
ところが東京都に尖閣諸島の購入計画が浮上したことで、日中両国の間でこの問題が一気に再燃しました。そして日本政府が国有化に踏み切ったのです。中国としては次の世代の英知に委ねたはずの帰属問題について日本側から領有権を主張されれば、話が違うのではないかとなるでしょう。 中国が黙っているわけにはいかない状況を日本側から作ってしまったことが、現在の尖閣諸島をめぐる緊張状態を生んでいる ことは否定できません。
言うまでもないことですが、中国側の主張を認めよということではありません。ただし、歴史的経緯を踏まえれば「領土問題は存在しない」と言い続けても、現在の緊張状態がおさまることはなく、さらに悪化させるだけであることは明らかでしょう。そして緊張状態の持続は非常にマイナスが大きい。双方ともに世論が悪化しますし、尖閣周辺で偶発的な衝突が起きる可能性も高まります。また周辺海域の防衛にかかる負担も小さくありません。実効支配する日本側は、いつどのような形で中国側が領海侵犯をしてくるかわからないので、常に警戒を続けなければなりません。安定的な状況は現に失われているのです。
むしろこの緊張の高まりに対して、両国が歴史的経緯を踏まえて誠実な話し合いを開始すれば、緊張の緩和と負担軽減、今後の共同開発や人的交流などの点で多くのプラスが出てきます。次の世代にためにも、外交によって解決の道筋をつけていかなければならないと思います。
(後半は省略)
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