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実施基準や経費の妥当性など課題を検証した有識者ヒアリングの内容は含まれなかった。 巻頭に写真41ページ、本編は151ページあり、合計はほぼ200ページに及ぶ。本編に松野博一官房長官が「準備から執行、事後処理に至る概略を取りまとめた」と序文を寄せた。共同通信が記録集の写しを入手し、全容が判明した。
完成した記録集は内閣府の事務局が編集作業を進めた。内容は
(1)国葬実施や予備費使用の閣議決定文書
(2)実行幹事会の概要
(3)当日の司会進行表
(4)案内状と区分別の発送数
(5)会場設営手順や参列者の送迎計画
といった事務資料が並ぶ。岸田文雄首相や、友人代表の菅義偉前首相らの追悼の辞も収めた。参列者に当日配布したしおりには式次第とともに、安倍氏の写真、「夢」の揮毫、略歴が記載されていた。記録集は近く国会図書館で閲覧可能になる。
松野氏の序文は「憲政史上最長の8年8ヵ月にわたり首相の重責を担った」など国葬を決めた理由について従来の政府見解を示し、「故人の人柄と事跡をしのぼせるにふさわしい盛儀だった」と総括。記録集が「理解の一助となれば幸いです」と締めくくった。
ただ政府が昨年12月公表した 有識者ヒアリングの論点整理には、実施に当たり政府や国会の事前調整が必要だったとの指摘が盛り込まれたのに対し、記録集では触れていない。
政府は過去にも公費支出した首相経験者の葬儀記録集を作成している。関係者は今回も前例に倣った構成だとして、検証や批判に触れなかったのは「有識者ヒアリングの論点整理を既に公表したため」と説明した。
【解説】批判も後世に伝えるべき
安倍晋三元首相の国葬記録集に、実施基準の曖昧さや、約12億円かかった経費の妥当性を問う声は一切盛り込まれなかった。岸田文雄首相は検証の言葉を重ねて口にしてきたはず。 政府が公式記録集を残すのは、この先、同様の儀式を執り行うことがある場合に、今回の事実関係を正しく後世へ伝えるためだ。さまざまな批判を含め、適切に記録すべきだ。
そもそも国葬実施の決定も拙速だったと批判された。首相は昨年9月の国葬開催の翌日「今後の議論に資するため、どういった根拠で国葬を行ったか記録に残す」と表明している。政府による有識者ヒアリングでは、合意形成努力が不十分との厳しい指摘も出た。にもかかわらず、ヒアリング結果を並べて作った論点整理を国会に報告しただけで、政府の主体的な分析や検証を避けてきた。
記録集には、国内外から多数が参列したといった肯定的側面が目立つ。一方で参列者名簿などは記載がない。 国葬決定過程の詳細は分からず、厳しい世論への記述もない。政府の姿勢こそ後世に問われるのではないか。
(共同・田川瑶子)
【用語解説】安倍元首相の国葬
昨年7月、安倍晋三元首相が選挙遊説中に銃撃されて死去。岸田文雄首相は政府主催の葬儀を閣議決定し、9月27日に東京・日本武道館で営まれた。約12億円の経費は全額国費。戦後の首相経験者の国葬は1967年の吉田茂氏以来2例目だった。政府は法的根拠に閣議決定と、「国の儀式」を内閣府の所掌とする内閣府設置法を挙げたが、野党は曖昧だと批判した。
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