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黒川氏の定年延長については安倍晋三政権(当時)による恣意(しい)的な人事 との批判があるが、辻氏は検察官の定年を延長させる必要があったとして「黒川氏のためではない」と否定。一方、 政権との事前協議があったのかなど具案的な人事プロセスについては回答を避けた。
検察官の定年は当時、検事総長は65歳、その他は63歳(段階的な引き上げで25年度から65歳)。 国家公務員法には最大3年の定年延長を認める規定があるものの、政府は従来、検察官には適用されないと解釈してきた。 しかし、安倍政権は20年1月31日、2月8日に63歳となる黒川氏の定年を半年延長すると閣議決定。安倍首相は法解釈の変更によるものだと事後に国会で説明したが、政権に近い黒川氏を検事総長にするための強引な人事だと野党が追及した経緯がある。
証人尋問では、法解釈変更は黒川氏のためだったのか▽安倍政権側からの要請があったのか――などが焦点となった。辻氏によると、閣議決定の約2週間前の1月16日、法務省刑事局から「社会情勢の変化に伴って犯罪の性質も複雑化し、検察官にも勤務延長が必要だ」との報告を受けた。検察官にも国家公務員法の定年延長規定が適用されるとの解釈が可能だとする内容で、辻氏も法解釈の変更はできると判断。森雅子法相(当時)に報告し、口頭で了解を得たとしている。その後の内閣法制局や人事院との協議でも異論はなかったとし、法解釈変更の政府見解が確定したと説明した。
辻氏は、「解釈変更は黒川氏の勤務延長を目的としたものか」との質問に対し、「そのようなことはない」と否定。また黒川氏の定年延長に関して政権と事前にやり取りがあったかについては「職務上の秘密にあたる」「個別の人事に関すること」などと繰り返し、協議の有無を含めて明かさなかった。
訴訟は22年、神戸学院大の上脇博之教授が起こした。解釈変更について法務省内で協議した過程を記した文書を情報公開請求したが、ほとんどの文書が「存在しない」として一部しか開示されなかったとして、不開示決定の取り消しを求めている。
【安元久美子、鈴木拓也】
◆「違和感」裁判長指摘
省庁の元事務次官が法廷に立つという異例の証人尋問は、大阪地裁の大法廷で約3時間行われた。
辻氏は19年1月、東京高検検事長に就いた黒川氏の後任として事務次官に起用された。辻氏も検祭官出身で、同じ東京大学の出身である黒川氏の3期下。21年9月に事務次官から仙台高検検事長のポストに移ったが、証人尋問が決まった後の23年7月に退職している。
この日の尋問では、淡々とした様子で質問に答えていた。ただ、原告側から人事の件で官邸を訪れたことがあるかを尋ねられると、「お答えを差し控える」と語気を強めて返答する場面もあった。
証人尋問の最後には、徳地淳裁判長から質問を受けた。黒川氏の定年延長の根拠となった法解釈変更について「2月の黒川さんの退職に間に合わせようと、1月半ばから急いで準備したという世間の見方についてどう考えるか」と聞かれると、「そういう事実関係はない」と明言した。
辻氏は法解釈変更の理由について、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案を提出するために必要だったと脱明したが、徳地裁判長に「法改正の前に(黒川氏の)勤務延長をすることに違和感がある」と指摘される一幕も。これに対し、辻氏は「具体的な人事に関わることなので言えない」と述べるにとどめた。
【安元久美子】
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