2016/01/08
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≪【 虎子/ココの誇顧/ココ ; 彷徨癖者・如水が愛犬のココ(ボクサー犬)の悲嘆・感嘆】= 01月08日  =≫

 オリンピックと建築家 =前節= 
=NewsWeek、2015年12月24日(木)、藤森照信(東京大学名誉教授);1946年生まれ。東京大学建築学専攻博士課程修了。東京大学生産技術研究所教授、工学院大学建築学部教授等を歴任。専門は建築史学。 ※アステイオン83より転載

競技場-1


山口は大学南校を出てフランスに学び、帰国後は文部省に入り、大学や高等学校を手掛け、文部省内の ランクは、森有礼大臣に続きナンバー3の地位にあった。

 山口に分があった。 にもかかわらず辰野に指名が下ったのは、当時日銀を仕切っていた高橋是清との縁による。 明治の最初期、唐津藩の英学塾で、辰野は高橋の教え子それも級長だったし、上京して工部大学校に入ったのも高橋の薦めによる。

 山口に続く辰野のライバルは妻木頼黄だった。 妻木は、コーネル大学とベルリン工科大学に学び、帰国後は内務省さらに大蔵省の建築家と なる。 内/蔵両省の建築家が文部省の工科大学教授より政府内での格が上なのは言うまでもない。

辰野が妻木より優位だったのは、日本建築学会と工科大学とい うアカデミーを握っていることと、妻木の許にいるスタッフが全員、日本の建築教育を一手に握る辰野の教え子もしくはその流れだったことくらいか。

競技場-3

 辰野と妻木は、国会議事堂をどちらが手掛けるかを巡ってもつれにもつれ、結局、妻木の死によって辰野は勝ったものの、設計を決める前に辰野もスペ イン風邪で急逝し、文字通りの死闘に終わっている。 辰野か妻木かどちらか一人がやれば、今よりは見映えのする建築になったと思われる。

 東京オリンピックについて述べよう。 この名のオリンピックは戦前に一回、戦後に今回を含めて二回、計三回計画されている。 今回のはこの文が出る頃にケリが付くはずだが、その前の二回について、建築史家として知るところを綴ってみたい。

 昭和一五年に開催予定だった東京オリンピックから。 設計は、当時、東京帝国大学の新進建築家として鳴らしていた岸田日出刀助教授が予定されていた。 もちろん、筆頭教授にして日本の建築界の、辰野と佐野利器に続く三代目リーダーでもあり、内務省にも強い筋を持つ内田祥三の指名による。

 岸田は、ヒットラーのベルリンオリンピックの会場を視察すべく派遣されるが、帰国後、内田には予期せぬことが三つ起こる。 一つは、政府としてはナチスのオリンピックこそ手本にするつもりなのに、岸田は、会場を手掛けたヒットラーのお抱え建築家アルバート・シュペーアのもとに出向かなかったばかり か、当時のドイツ建築界での敵役ブルーノ・タウトなどのモダニストばかりに会い、帰国後、シュペーアの古典的デザインを古臭いと批判した。

 このことは建築界の内側の問題として納まる可能性も強かったが、納まらないのは会場をどこにするかで、なんと青山練兵場がいいと公言したのである。 今は知る人も少ないだろうが、かの地は大日本帝国陸軍の聖地としての性格を持つ。明治神宮に隣り合い、首都の練兵場として知られ、軍の政治犯(反乱 軍)もここで刑に処せられている。

 もちろん、帝国大学の一建築家たちによる根回し無しの立地計画に軍の反発は激しく、万事休す。

競技場-2

 もう一つ内田の誤算は、舞姫問題だった。 岸田が帰国すると、千葉で新婚生活を送る岸田家のドアを、ある朝、若きドイツ人女性が叩いた。 窮した岸田は内田に相談し、内田は、中堅建設会社の社長を呼び、金銭を含め事後処理を依頼した。


 岸田が降りた後、誰がオリンピック計画を担当することになったのか。 当時すでに名を成していた者や岸田世代の面々が思い浮かぶが、意外にも東京市(都)の建築家たちに任される。 意外に思うのは、東京市の役人として中小の公共建築の設計や維持管理に日々を送る建築家に、客観的に見てオリンピック の主会場を手掛けるほどの力があるとは思えないからだ。

でも、建築家の業で、やってみたい、出来るかもしれない、と思ってしまう。 そして生まれた案を見ると、性能は満たしているが、配置といいデザインといい凡庸でしかない。 凡庸な計画は、幸い戦雲により実現には至らなかった。

競技場-4

古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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Last updated  2016/01/08 06:08:58 AMコメント(0) | コメントを書く


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