2016/09/13
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 【オピニオン】オバマ大統領 「骨抜き」外交政策の帰結 
=The Wall Street JournalBy WILLIAM A. GALSTON 2016 年 9 月 7 日 19:21 JST

  米国で気が滅入るような大統領選挙が進んでいる間も、世界情勢は動き続けている。しかも、聞こえてくるのは朗報ではない。

 中国・杭州で先ごろ開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議で、中国の政府関係者は明らかに礼を失する態度で米国の大統領とその側近らに接した。 中国でナショナリズムが台頭するなか、習近平国家主席は南シナ海のほぼ全域の領有権を主張している。 これは、米国が海軍力を一時的に誇示したところで、阻止できなかった動きだ。
 一方、アジアに軸足を置くというオバマ大統領の要となる政策――環太平洋経済連携協定(TPP)――は民主・共和両党の大統領候補から反対されているほか、連邦議会では存亡の危機にさらされている。 TPPが日の目を見なければ、米国への信頼が大きく損なわれることになるだろう。

 中東ではシリアの内戦で人命が失われ続けており、人道的停戦へ向けた米国とロシアとの直近の交渉努力は米政権が言う「信頼」問題により失敗に終わっている。 ロシアのプーチン大統領は武力行使で自らを泥沼に陥れるというオバマ大統領の推測は、現実というよりもオバマ氏自身の心の中の思いを描いたものだ。
 プーチン大統領はそれほど犠牲を払わずして、この地域の主要プレーヤーとしての立場を回復させた。 米国の友好国や同盟諸国は米国が弱腰になっているとみている。

 シリア北部では米国の支援を受けたクルド人民兵部隊が過激派組織「イスラム国」(IS)に対する唯一の効果的な戦闘部隊になっている。 だが、トルコが国境を越えて部隊を送り込んできた際、オバマ大統領はバイデン副大統領をトルコに送り、クルド人部隊に制圧したIS掌握地域から撤退するよう求めた。     トルコのエルドアン大統領は、クルド人のナショナリズムが発現している場所はすべて、それがどこであれ、トルコ国内の安全に対する脅威だと捉えている。

 米国には、エルドアン大統領の意向に従う義務はない。 この地域で数少ない親欧米勢力の命運がかかっているとなればなおさらだ。 オバマ大統領は中国でエルドアン大統領と会談したが、何ひとつ合意には至っていない。 米政権が標榜するシリアでの「リアリズム(現実主義)」は結局、有害な混乱をもたらしている。


 G20首脳の集合写真は多くを物語っている。 一方の端にはエルドアン大統領と言葉を交わすプーチン大統領の姿があり、エルドアン大統領は注意深く耳を傾けている。 もう一方の端に立つオバマ大統領はその会話に興味深げな視線を向けている。 中央に立つ習国家主席は自信満々の笑顔を見せている。 権威主義者の「友好協定」が花開く中、米国は傍観者の役回りに降格させられたのだ。

 オバマ大統領は、シリア国内の出来事はそれがどれだけ悲惨なものに見えようと、米国の中核となる利害には何の影響もないと考えているようだ。 仮にそうであれば、大統領はひどい思い違いをしている。 シリアから溢れ出た難民たちは中東や欧州の近隣諸国を不安定な状況に陥れている。

 反移民のナショナリズムは欧州大陸全域で台頭しつつある。 英国が6月の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を決めた背景にあったのもこれだ。 当初は難民を歓迎していたドイツのメルケル首相も今は守勢に立たされている。

 先週末、メルケル首相の地元の州で行われた議会選挙では、反移民を掲げるポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に敗れ、政権与党・キリスト教民主同盟(CDU)は3位に転落した。 長年、寛容さの拠り所とみられてきたデンマークでさえも、移民に対する反発が生じており、移民排斥を訴えるデンマーク国民党(DPP)が今や同国第2位の政党に成長している。

 弱さが弱さを生む。 プーチン大統領がウクライナ領土のクリミア半島を併合したことに対する米国の対応は全く効果がなかった。 1936年にナチス・ドイツが条約で非武装地帯と定められていたラインラントに軍隊を進駐させた際、英国のロジアン卿はドイツが「自分たちの裏庭」を歩いているだけだと言った――条約上、ドイツにはそうしてはならない義務があったことは気にするな、と。


 プーチン大統領による大胆なクリミア事件の後に、似たような底流を認識するのは難しいことではない。 ロシアを後ろ盾にした分離・独立派がウクライナ東部を再び攻撃をしたが、米国はウクライナに防衛のための武器を供与しなかった。

 大統領は、前任者の外交政策で最も人気のなかった施策と正反対の方向に自身の外交政策を定めることが多い。 だが、これがうまく運ぶことはめったにない。 間違いの反対を試すと、たいていは反対の間違いを犯すことになる。

 オバマ大統領の場合も同じだ。 彼はジョージ・W・ブッシュ前大統領がイラク侵攻を決めたことに反対し――それは正しかったと筆者は思うが――その反対姿勢を貫いてホワイトハウスを勝ち取った。 だが、「ノーモア・イラク(イラクのような戦争はもういらない)」は中東でさえ(いや、中東だからこそ)不適切な格言になった。

 武力行使、または武力による威嚇にさえアレルギー反応を示すオバマ大統領は、米国の外交力をほぼ骨抜きにした。われわれはこの8年間、ほとんどムチを持たず、わずかなアメもないような外交実験を行ってきた。 それがもたらした結果は明白だ。 良い議論が、自然に広がっていくほど十分な力を持っていることはめったにないのだ。

 ドナルド・トランプ氏が大統領に選ばれれば、今の悪い状況はさらに悪化するだろう。 だからこそ、共和党の外交政策を担う主流派は彼を見捨てたのだ。 中には対立候補のヒラリー・クリントン氏に投票するとすでに公言している人もいる。彼らにとって、従来通りに武力を重視し、かつ超党派で推進されることの多い外交政策を擁護する人物はクリントン氏だからだ。

 数々の失敗にも関わらず、米国は世界の平和と安全保障上で最も信頼できる保証人であり続けている。 この実績を守ってくれる見えざる手はない。

 われわれが後退すれば、混乱が生じる。 人の世でそれ以上悪いものは何もない。


古都 老翁がいた。 翁は愛犬を愛で朝夕の散歩に伴う。 翁は大壺を持ち、夕刻 酒を片手に壺に躍り入る。 くぐもる声で語る傾国の世辞は反響し、翁の安息を妨げ、翁はなす術も無く自笑。 眠りに落ちた。 
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