2020/01/26
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米イラン危機で世界経済が景気後退に突入する?
= NewsWeek_Column CIAが読み解くイラン危機 2020年1月21日(火)
サム・ヒル(作家、コンサルタント)


アメリカとイランの対決の第1ラウンドが終了したようだが、世界経済はほとんど動じていないらしい。衝突をエスカレートさせないつもりと見受けられる両国の態度が安心感を誘い、市場は持ち直した。
米軍が駐留するイラク国内の複数の空軍基地を、イランが弾道ミサイルで攻撃したのは1月8日(現地時間)のことだ。

同日、ニューヨーク株式市場ではダウ平均が当初2万8556ドルの値を付けたが、ドナルド・トランプ米大統領の声明発表の直前に2万8637ドルまで上昇し、発表後には2万8768ドルに値上がり。スタンダード&プアーズ(S&P)500社株価指数とナスダック(米店頭市場)総合指数は終値で史上最高値を更新した。

つまり、イランをめぐる問題が世界経済に大きな悪影響を与えることはないと、市場は判断している。少なくとも今のところは──。

市場の冷静さが続くかどうかは今後の行方次第だ。多くの専門家は全面衝突の可能性はないとみるが、危機が終わったとは考えていない。

イランのミサイル攻撃は、1月3日にアメリカがイラン革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官を殺害したことへの「明白かつ公的な報復であり、イラン国民向けに必要な行動だった。一方で数カ月以内に、ひそかな報復が行われる可能性も高い」。ナショナル・イラニアン・アメリカン協会のシナ・トゥーシ上級リサーチアナリストはそう指摘する。

トゥーシに言わせれば、イランには外交上の選択肢が存在しない。「トランプと(マイク・)ポンペオ(米国務長官)は要求を明言していないが、イランは既に身動きが取れず、差し出せるものも残っていない。アメリカの『最大限の圧力』の一環である制裁で、イラン経済は極度に苦しい状態にある」



イランが何をするか、それはいつかは誰にも分からない。「報復すべき相手はアメリカか、トランプか。イランがトランプだと判断すれば、今年の米大統領選などへの影響を狙ったタイミングになるだろう」と、スタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授(経済学)は語る。

原油価格急騰が意味するもの
ワシントンのシンクタンク、ニューアメリカ財団のストラテジストのピーター・シンガーはサイバー攻撃の増加を予想する。

「イランはサイバー攻撃能力の構築に多くの資源を投じた。これまでに行ってきた一連のサイバー攻撃はその能力を見せつけることが目的だった......。こうした攻撃が再開され、ソフトターゲットである地方自治体の水道システムなどが標的になるのではないか」

米ライス大学ベーカー公共政策研究所のエネルギー・グローバル原油担当フェロー、マーク・フィンリーは「原油タンカーや精製施設、パイプラインが攻撃されても驚かない」と言う。トゥーシによれば、イランの代理勢力であるレバノンのイスラム教過激派組織ヒズボラなどが爆弾攻撃や暗殺を行う可能性もある。

こうした出来事はどれも原油市場の混乱の原因になり得る。旅行業界や製造業、農業部門は原油価格の動向に大きく左右される。それでもグローバル経済への影響は、1970年代のオイルショック並みの規模にはならないだろう。

原油価格が経済に与える影響の度合いは低下する一方だ。シェール革命のおかげでアメリカのエネルギー自給率は100%に迫っている。とはいえ原油は国際的に取引され、アメリカは主要な輸出国かつ輸入国だ。つまり、影響は偏在的かつ局地的なものになるだろう。

米国内の多くの地域、特により所得が低い地方部が打撃を被る一方で、原油産出州のテキサスやアラスカは好景気に沸くことになるかもしれない。

原油価格が上昇しても、長続きする見込みは薄い。「地政学的理由による原油急騰はそれほど長期的なものにならない傾向がある。短期的出来事に対処するためのブレーキ装置が制度内に多く組み込まれている」と語るのは、エネルギーリスク分析を手掛ける米調査会社クリアビュー・エネルギーパートナーズの経営幹部ケビン・ブックだ。



だが米イランが全面衝突した場合、原油供給体制の混乱はより長引き、原油価格が1バレル=100ドルに達する恐れもある。そうなれば「1世代にわたって続く世界経済の減速と甚大な影響」がもたらされるだろうと、ニューアメリカ財団のシンガーは言う。

イラン、またはイラクがさらなる攻撃に踏み切り、エスカレーションの悪循環が起きたら、こうした事態は避けられないかもしれない。

戦争にはならないとしても
アメリカが先制攻撃を決断する可能性もある。イランの体制変革を主張する声はトランプ政権内に強く残る。「(ソレイマニ殺害を)突発的で場当たり的と見なすのは間違いだろう。これは米政権内のタカ派が長らく主張していた行動だ」と、ブックは指摘する。

トゥーシも同意見だ。「最終的には戦争に発展し、アメリカにとってベトナム以来、最も高くつく戦いになるのではないか」

とはいえ市場がみるところ、その現実味は薄い。イランもアメリカも強硬発言を続けているものの、実際には当事者全員が危機からの出口を探っているようだ。

イランのミサイル攻撃は人的被害を出さないよう計算されていたらしい。トランプは攻撃後の声明で、被害は「最小限」で、「イランは臨戦態勢を解こうとしているようだ。全ての関係者にとってよいことであり、世界にとって大変よいことだ」と発言。抑制的な姿勢だと受け止められた。

衝突の沈静化に向けて、イスラエルやサウジアラビアが舞台裏で動いている気配もある。「サウジアラビアは自国の石油施設にイランのミサイルが降り注ぐ事態を望んでいない。今では両国はアメリカを説得して、段階的な緊張緩和を実現しようとしている」と、トゥーシは言う。

だが限定的な戦闘というシナリオであれ、不確実性が高まれば、ほころびが見え始めている世界経済は景気後退に見舞われかねない。スタンフォード大学のブルームはこう語る。「トランプは予測不可能で、イランもイラク政府もそう。これは実に有害なコンビネーションだ」
<2020年1月28日号「CIAが読み解くイラン危機」特集より>



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Last updated  2020/01/26 05:50:06 AM
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