文豪のつぶやき

2005.07.23
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カテゴリ: 新撰組
伊東は右の頚動脈から左に、首を刺し貫かれたまま、ちょうどそれが支えになって立っている。
生命が首の根から刻々と抜けてゆく。
新撰組隊士武藤勝蔵が背後に回った。
勝蔵はかつて伊東の馬丁をやっていたが最近隊士に取り立てられた。伊東には馬丁時代ずいぶん可愛がられたらしい。が隊士になりたての勝蔵は手柄がほしい。
背後から斬りかかろうとした瞬間、伊東は振り返りざま抜き打ちで勝蔵を真っぷたつにした。首に槍が刺さったままである。
絶妙の剣というべきであろう。
が伊東の剣もここまでである。首に槍をつけたまま、二三歩、歩くと生命が潰えた。
伊東はどう、と倒れると息絶えた。
この夜の指揮者は土方歳三。

いわば伊東はおとりである。
まもなく伊東の遺骸を見つけた町役人が高台寺党に知らせるだろう。
土方は伊東の遺骸を引き取りに来た高台寺党を殲滅する気でいる。
そのためすでに鎖帷子を着た新撰組四十余人をすでに伊東の周りに伏せてある。
一体多摩の百姓出身の土方の、遺骸をえさにして相手方の殲滅を狙うという戦法はどういうことだろう。
日本史を通じてもこの戦法はない、といわれている。
やがて高台寺党の七人が下駄を踏みとどろかして油小路にやってきた。






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最終更新日  2005.07.23 08:46:29
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