文豪のつぶやき

2005.08.16
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カテゴリ: 新撰組
鳥羽伏見の敗戦で江戸に逃げ帰ってから、近藤は傷も徐々に癒え、元気も増してきた。
あてがわれた江戸丸の内の鳥居丹後守宅から、せっせと江戸城へ登城する。
なにしろ旗本直参である。お殿様になったのである。
この江戸城で旗本仲間から耳寄りの情報を聞いた。
甲府使番支配佐藤駿河守という大身の旗本である。
「実は」
と佐藤は近藤に耳打ちをした。
「お手前、甲府の大名になる気はないか」
近藤にとってこんな魅力的な言葉はないであろう。

佐藤駿河守はその甲府の管理人なのである。
今、土佐の乾退助(板垣退助)が三千の東山道方面軍を擁してとして東山道を甲府に向かって進撃している。この甲府を守っているのが下級役人とも言うべき、百数十人の与力、同心なのである。このままでは甲府はやすやすと官軍の手に渡ってしまう。
佐藤駿河守はさらにささやく。
「近藤殿、甲府をお取りなされ。このことは幕閣のお歴々にも了解を得ています。老中の方々は、近藤殿が甲府を獲ったら、甲府の天領の半分を近藤殿にやってもよいといっておりますぞ」
天領の甲府は百万石、半分でも50万石ではないか。近藤は有頂天になった。
「兵、金などはこちらで用意いたしましょう。ぜひそうなさい」
多摩の百姓が50万石の大名。
長州や上杉でも30万石程度なのに、この俺が50万石。
近藤は狂喜した。
近藤は国士を装っていたが、所詮一個の純情な多摩の百姓であったろう。





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最終更新日  2005.08.16 08:25:46
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