文豪のつぶやき

2008.07.29
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カテゴリ: 時代小説
 この時、数人の長岡兵が血相を変えて白井の前を駆け抜けようとした。
「あっ、白井殿、大変です。」
 一人の藩兵が立ち止まった。
 河井が撃たれて重傷であるという。
 声が震えている。
「河井先生が」
 白井は絶句した。
「河井先生はどこに」
 御引橋のたもとにある民家へ運ばれております、そういうと藩兵は駆けだした。

(河井先生が)
 重傷を負ったとあれば、ほどなく長岡軍も敗れるであろう。
 白井は青木と加藤の最期を思い浮かべた。
 銃弾の飛び交う中、加藤の亡骸を掻き抱き、泣き叫びながら加藤の名を呼んでいた青木。
 砲煙の中で揺れていた青木の剣片喰の袖印。
 伊藤さんも矢口さんも死んだに違いない、と白井は思った。
 砲声は去りつつある。





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最終更新日  2008.07.29 23:40:29
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