《櫻井ジャーナル》

PR

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

サイド自由欄

寄付/カンパのお願い

巣鴨信用金庫
店番号:002(大塚支店)
預金種目:普通
口座番号:0002105
口座名:櫻井春彦

2010.04.16
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 常習犯罪者になるであろう未成年者を「予言」するIBMのコンピュータ・システムを、米国フロリダ州の司法当局は導入するのだという。犯罪を生み出す環境を改善するのではなく、犯罪へ向かうであろう未成年者を「予防更正」させて「安全な社会」を築くのだという。この報道に接し、映画「マイノリティ・レポート」を連想した人も少なくないだろう。予防拘禁と同じ発想であり、戦前の思想警察/検察にもつながる考え方だ。

 言うまでもなく、犯罪を生み出す最大の要因は「貧困」である。貧困層は特定の地域に住む傾向があり、そうした地域では教育も破綻している。アメリカの場合は特にひどい状況だ。そのため、読み書きのできない子どもが少なくない。そもそも職に就くことが困難な中、読み書きができなければ働き口を見つけることは一層困難になり、生きるために窃盗、強盗、麻薬などの犯罪に手を染めることにもなりかねない。

 貧困問題を解決するためには、まず失業問題を解決する必要がある。巨大企業に対して労働者の権利を認めさせ、適切な対価を支払わせることが第一歩だ。当然、劣悪な条件での労働が容認されている国へ労働拠点を移して儲けるという経営も許してはならない。

 勿論、それでも不公正な関係をなくすことは不可能なわけで、政府はそうした不公正な関係を是正する義務が生じる。マーケットに公正さを求めることは無理な相談であり、別の手段を考えなければならない。マーケットには公正な競争も「神の見えざる手」も存在せず、「自由競争」とは優位な立場にある少数の人間が利益を独り占めすることにすぎない。利己的な行為は利己的な結果しか生まない。庶民が社会的強者を監視するシステムがどうしても必要だということだ。そのシステムとして考え出されたのが民主主義。支配層がこのシステムを「衆愚主義」と名づけて批判するのは、ある意味、必然的なことだ。

 富の偏在を是正する第一歩は税制の改革だろう。濡れ手で粟の大儲けをしている大企業の法人税を引き上げ、所得税の累進率を高め、社会保障のコストを負担させることも必要だ。貧富の差なく子どもたちに等しく教育の機会を与えることも重要である。

 教育環境に貧富の差があることは指摘されているが、日本の場合、一般入試で入学する学生の比率が下がっていることもあり、実力ではなく出身高校によって優位不利が明確になりつつあるようだ。入試システムの変更もあり、高校3年は受験対策に当てるカリキュラムを組みやすい中高一貫校の人気が高まり、小学校に入試の山ができた。こうした状況に対応できるのは、比較的裕福な家庭だけだろう。

 ようするに、犯罪を減らしたいならば、巨大企業の「遣らずぶったくり経営」を規制して、教育の機会均等を実現することが必要になるのだが、そうした政策を無教養なエリートは好まない。そこで、アメリカでは事実上、貧困を犯罪にした。微罪で刑務所に叩き込むということだ。ついでに刑務所を民営化し、ビジネス・チャンスを増やした。刑務所の経費は税金。庶民増税で対応すれば、富裕層は困らない。

 イギリスの都会が監視カメラで溢れていることは有名だが、アメリカも監視システムの導入に熱心である。1950年代からFBIはCOINTELPROと名づけられたシステムで戦争に反対する人々を監視、1967年にはCIAが同じ目的で、MHケイアスという監視プログラムを始動させ、NSAはECHELONで地球上の人間全てを監視しようとしている。その後もさまざまな監視システムが開発され、導入されようとしている。日本も例外ではない。そうした流れをリードしてきたひとりが原田明夫元検事総長だということは、本コラムで何回も指摘してきた。

 「テロ」であろうと「犯罪」であろうと、支配層が本当に監視したい対象は自分たちに都合の悪い人々、つまり「テロリスト」や「犯罪者」ではなく、労働者の利益を代弁したり、戦争に反対する人々だ。フロリダ州が導入するというIBMのSPSS分析システムも結局は、そうした目的で使われることになるだろう。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2010.04.17 01:48:16


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: