《櫻井ジャーナル》

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2010.07.22
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 Googleと中国政府との対立に心躍らせていた人たちにとって、両者の和解は許せないことだろう。中国嫌いの人たちはGoogleを持ち上げ、英雄視することで中国を攻撃したかったらしいが、そのGoogleが中国でのビジネス継続を決めてしまい、「中国が国際社会から批判される」という夢は、はかなくも消えてしまった。

 しかし、Googleに「ネットの自由」を期待すること自体が間違っている。アメリカの政府や大企業を信奉、あるいは信仰している人々は別にして、インターネットを利用する少なからぬ人々は、Googleを警戒すべき会社だと考えている。

 最大の理由は、NSA(国家安全保障局)やCIA(中央情報局)といったアメリカの情報機関と緊密な関係にあるからである。つまり、Googleを英雄視した人々は同社の実態を知らないのか、反中国という思いに支配されて現実が見えていないのか、米情報機関に好意を持っているのだろう。2007年にイギリスのプライバシー権擁護団体「プライバシー・インターナショナル」は、プライバシーという視点から、Googleを最低ランクに位置づけている。

 情報機関と特別な関係になくても、アメリカの企業である以上、愛国者法に従う義務があり、集めた情報は全てアメリカの政府機関へ提供しなければならない。勿論、こうした義務はGoogle以外の企業にも言える話であり、アメリカの企業を利用すれば、そうしたリスクが生じるということを意味している。

 現在、Googleは検索エンジン市場で70%のシェアを占める巨人だが、それだけ個人情報を収集できる立場にある。例えば、どこへアクセスしたのか、誰に電子メールを送ったのか、どんなブログを書いているのか、どんな写真を手に入れているか、どんな地図を見ているか、どんなニュースを読んでいるのかといった個人情報を集めている。

 中でも問題視されたのがGoogle Desktop。このソフトでSearch Across Computersの設定を許すと、コンピュータのファイルはGoogleのサーバーにコピーされてしまったのである。さすがに、この機能は中止になったらしいが、それにしても、Googleが情報収集という仕事をアメリカの政府機関から請け負っているような存在であることに変化はない。少なからぬ情報機関からの「転職組」がGoogleで働いていると言われているが、会社側は「個人情報は公表しない方針」として実態を明らかにしていない。

 同社が提供しているアプリケーションのひとつ、Google Earthの技術を開発した会社はKeyholeである。そのKeyholeに設立資金を出したIn-Q-TelはCIA系のベンチャー・キャピタルとして有名である。1999年に設立されているが、その際にロッキード・マーチンの元CEO(最高経営責任者)、ノーマン・オーガスティンが協力している。Googleが手を組んでいる企業の中には、このロッキード・マーチンも含まれている。

 インターネットが情報の収集と発信という面で有益な道具であることは間違いないが、その一方で情報戦の舞台だとうことも事実だ。Googleもそうした仕組みの一部を占めているわけであり、Googleと中国政府との対立を単純に「善」と「悪」の構図で描き、自動的に「反中国グループ」を「民主化勢力」と言い換えることは根本的に間違っている。

 例えば、コロンビア大学が出している雑誌、CJR(コロンビア・ジャーナリズム・レビュー)の1998年9/10月号に掲載されたジェイ・マシューズ(ワシントン・ポストの初代北京支局長)の記事によると、1989年6月3日から4日にかけて(つまり天安門事件があったとされる日)現場に居合わせた人の話では、広場に到着した軍隊は残っていた学生が平和的に立ち去ることを許しているという。



 学生が虐殺されたという話を広めた香港の新聞は、「精華大学の学生」の話として、兵士が広場の真ん中で機関銃で学生を撃っていると書き、西側のメディアがこの未確認情報に飛びついたのが実際だという。学生の指導者、吾爾開希(ウイグル系の名字)は200名の学生が射殺されるのを見たと発言していたが、その出来事があったとされる時刻の数時間前、彼は広場から引き上げていたことが後に判明している。

 広場から排除される際、1分半ほどの間、自動小銃の発射音を耳にしたというCBSのリチャード・ロスの話、あるいは兵士が学生を撃っているとする中国人の話を聞いたという「人権活動家」のジョージ・ブラックとロビン・ムンロの話などが伝わっているが、やはり「目撃者」ではない。BBCの記者は北京ホテルから銃撃の様子を見たとしているようだが、ホテルから広場の中央は見えないという。

 中国は「悪」だと刷り込まれている人々にとって、「天安門事件」は自分の通念を確認するために好都合な話だった。中国非難の輪に加わることは一種の宗教的な儀式であり、陶酔感に浸ることができただろう。事実に基づく話などに彼らは興味がない。しかし、彼らが望む展開とは違う道を歩き始めたGoogleの行為は背信であり、許すことができないに違いない。





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最終更新日  2010.07.23 10:06:25


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