《櫻井ジャーナル》

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2010.08.03
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 5月31日午前4時30分、多くの人が寝込んでいると思われる時刻にイスラエル軍は公海上(ガザから約100キロメートルの海上)でガザ支援船「マビ・マルマラ」を襲撃し、活動家など多数を死傷させた。イスラエル政府は世界的に巻き起こった批判の声を無視、国連の調査も当初は拒否していたのだが、イスラエルを取り巻く状況は悪くなるばかり。8月2日になり、ベンジャミン・ネタニヤフ首相は国連の調査を受け入れると表明せざるをえなくなった。アメリカ政府は国連の調査をイスラエル政府自身による調査より重要視はしないとしているが、それはオバマ政権の願望でしかない。

 勿論、国連の調査がスムーズに進むとは誰も思っていない。調査を指揮するのはニュージーランドの元首相ジェオフリー・パーマーとコロンビアのアルバロ・ウリベ大統領で、調査団にはイスラエルやトルコからも参加する。調査団を拒否できないなら、内部に入って働きかけたり情報を収集する方が得策だとイスラエル政府は判断したのだろう。つまりイスラエル政府が積極的に協力するとは考えにくい。パーマー元首相が「困難で厳しい」調査になると言うのも当然のことだ。

 また、コロンビアのウリベ大統領は親アメリカ派の人物で、アメリカに軍事基地を提供、ベネズエラのウーゴ・チャベス政権とは敵対関係にある。アメリカのネオコン(親イスラエル派)は2002年にチャベス政権打倒を目指すクーデターを仕掛けて失敗したほか、チャベス暗殺も計画したと言われている。このときのシナリオと酷似した展開でクーデターを成功させた国がホンジュラスだ。

 そのチャベスはアメリカと対立する一方、ラテン・アメリカだけでなく、イスラム諸国やアフリカの国々との連帯を目指している。アメリカにとっては気に入らない存在だ。そんなこともあり、キューバ政府とともに「カリブの海賊」と呼ばれている。この「海賊」が善玉なのか悪玉なのかは読者の判断に委ねる。

 ガザ支援船の襲撃では、イスラエル政府の内部にも快く思っていない人たちがいるようだ。例えば、モサド(イスラエルの情報機関)の長官を務めていたメイア・ダガンは6月1日にイスラエル議会で支援船襲撃を批判している。モサドといえば、暗殺をはじめとする破壊工作を世界規模で実行してきたイスラエルの強力な「暴力装置」だが、その長官でさえ「遣りすぎ」だと考えることを現政権は行っているわけだ。

 そうした強硬路線の中心にいると見られている人物がアビグドル・リーバーマン外相。イスラエル国内では、メディアが「大本営発表」的な報道を行っていることもあって強硬路線を支持する人は多いのだが、国外に出れば、イスラム諸国だけでなく西ヨーロッパの国々でも暴力的な政策は批判され、リーバーマンの評判も悪い。メディアがイスラエルにとって都合の悪い報道をしないアメリカや日本では反イスラエル感情は高まっていないようだが、世界的に見るとイスラエルを取り巻く状況は悪化している。「イスラエル支持競争」をしているアメリカの議会は異様だということでもある。

 モサドの長官だったダガンだけでなく、ベンジャミン・ネタニヤフ首相もリーバーマン外相と対立、両者の間には軋轢があるとする話も伝わっていた。「悪玉」のリーバーマンに「善玉」のネタニヤフという構図だ。悪いのはリーバーマンであり、首相のネタニヤフはそれほどでもないと感じた人もいるだろう。

 しかし、この構図が7月中旬に崩れてしまう。ヘブライ語の放送局「チャンネル10」がネタニヤフがアメリカ政府を愚弄している場面を放送したのである。2001年に撮影されたその映像の中で、彼はアメリカを操ることは簡単だとした上で、アメリカ人の80%はイスラエルを支持し、ビル・クリントン政権や国連との対決も怖くないと強調している。

 それから9年、イスラエルを取り巻く環境は大きく変化した。アメリカを操るだけでは世界を操れない時代に入っているのだ。「アメリカの時代」は終焉を迎えようとしているとも言える。マスコミの報道を見ていると、1990年代、つまりクリントン政権の時代から日本の権力層はネオコンにすり寄った。アメリカの保守本流から離れ、イスラエル/親イスラエル派に接近したことを意味している。その選択が日本にとってきわめて危険だということを菅直人政権は理解しているのだろうか?





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最終更新日  2010.08.03 18:34:55


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