《櫻井ジャーナル》

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2013.10.29
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ギリシャでロマ民族の夫妻と生活しているブロンドの少女が注目され、誘拐事件であるかのようにメディアは報道し、当局も同じような姿勢で動いた。そしてふたりは起訴される。

 ところがその後、夫妻が当初から主張していたように、ブルガリアに住むロマの女性が少女を里子に出したことが確認される。アイルランドでもロマの育てていた子どもを当局は連れ去ったのだが、後に実の親子だということが判明した。「無実が証明されない限り有罪」という姿勢をロマに対してギリシャやアイルランドの当局は示したわけだ。ヨーロッパにロマ差別があることは有名な話で、今回の出来事でも多くの人びとは事実関係が明らかになる前からロマ夫妻を有罪だと決めつけていた。

 フランスでは2010年からロマを出身国へ追い返すプロジェクトが展開され、今月9日にはスクール・バスで移動していたロマの15歳になる少女が警察に拘束され、彼女の家族はコソボへ強制送還されている。コソボで生活を始めて間もなく、家族は何者かに襲撃され、母親は入院するほどのけがを負ったようだ。少女は強いショックを受けたという。

 コソボは「西側」の支援でユーゴスラビアから分離独立した国。1991年から独立運動が始まり、セルビアの治安当局はこれも許容していたのだが、人権擁護団体やメディアはセルビア側の「弾圧」を宣伝、その一方で武装勢力の編成を始める。1992年頃から武器はアルバニア経由で供給された。

 そして台頭してきたのがコソボ解放軍(KLA、あるいはUCKと表記)だ。KLAが麻薬の密輸で資金を調達していたことは有名な話だが、 臓器の密売にも手を出していた と報告されている。

 1996年2月にコソボ北部にいたセルビア人難民を襲撃してKLAは活動を開始、98年にはアメリカのマデリーン・オルブライト国務長官が空爆の支持を表明する。間もなくしてビル・クリントン大統領はコソボから軍隊を引き揚げなければセルビアを空爆するとスロボダン・ミロシェビッチ大統領を脅し、セルビア側は要求を受け入れる。

 しかし、戦闘は収まらない。ヘンリー・キッシンジャーによると、1998年10月から99年2月の期間における停戦違反の80%はKLAだった。その翌月、1999年3月にNATO軍はユーゴスラビアを先制攻撃、その際にミロシェビッチの自宅や中国大使館を空爆で破壊している。

 KLAはクロアチアの排外的な勢力と関係が深い。その歴史をたどると、ウスタシに行き着く。この組織は1920年代の後半に創設され、「クロアチア人の国」をつくろうとしていた。



 ナチスはコミュニスト、社会主義者、ユダヤ人などと同様、ロマも弾圧、多くの人が殺されているのだが、ユダヤ人に対してとは違い、「西側」は責任を感じていないようだ。ヨーロッパにロマの国をつくろうという声も聞こえてこない。

 歴史的に見ても、コソボはロマにとって安全な場所とは言えない。独立の際にもセルビア人が虐殺されている国だ。こうした事情を承知の上でフランス政府はロマの家族をコソボへ強制送還し、家族は襲撃されたということになる。





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最終更新日  2013.10.30 01:55:37


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