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2016.03.08
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アメリカ軍はシリアへB-52戦略爆撃機の派遣を検討

 シリアでアメリカが空爆を始めたのは、2014年9月23日のこと。その様子を取材したCNNのアーワ・デイモンは翌朝の放送で、最初の攻撃で破壊されたビルはその15から20日前から蛻の殻だったと伝えている。その後もアル・カイダ系武装勢力やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)を本気で攻撃していないようで、そうした勢力は支配地を拡大させていた。

 アメリカ政府はアサド体制を倒すために「穏健派」を支援するとしていたが、2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAがバラク・オバマ政権に提出したシリアの反政府軍に関する報告書によると、 反シリア政府軍の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだとしている) であり、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているのが実態だった。

 本ブログでは何度も書いてきたが、西側の政府やメディアが宣伝していた「穏健派」は幻影にすぎないということだ。そこで、DIAはアメリカ政府が方針を変えなければ、その勢力はシリア東部にサラフ主義の支配地を作りあげると警告していたが、実際、その通りになった。報告書が作成された当時にDIA局長を務めていたマイケル・フリン中将はアル・ジャジーラに対し、 ダーイッシュの勢力が拡大したのはオバマ政権が決めた政策による としている。2015年2月にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官がCNNの番組で アメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げた とも語っていた。アメリカ軍は「テロとの戦争」が戯言だと認識した上で政府の命令に従って作戦を実行してきたわけだ。

 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、2011年10月から15年9月まで統合参謀本部議長を務めた マーチン・デンプシー陸軍大将はアル・カイダ系の武装集団やそこから派生したダーイッシュを最も危険だと考えていた

 ロシア軍は戦闘爆撃機だけでなく、早い段階にカスピ海の艦船から26基の巡航ミサイルを発射、全てのミサイルが約1500キロメートル離れた場所にあるターゲットに2.5メートル以内の誤差で命中したとされている。その後、地中海に配置されている潜水艦からもミサイル攻撃を実施したという。

 ロシア軍の空爆が効果をあげ、戦闘能力への評価や信頼度が高まる中、アメリカ軍も燃料輸送車を攻撃するのだが、 盗掘した石油の輸送に携わっている「善良なドライバー」を殺さないため、攻撃を開始する約45分前に空爆の実施を知らせ、トラックから速やかに離れるように警告するパンフレットをまくという茶番 を演じた。しかも、アメリカの有力メディアはロシア軍が公表した石油関連施設の破壊や燃料輸送車への攻撃を撮影した映像をアメリカ軍によるものとして公表していた。

 西側の手先としてシリアを侵略していたアル・カイダ系武装集団やダーイッシュが敗走しはじめると、トルコ政府やその黒幕はロシア軍による空爆を止めさせようと考えただろう。内部告発支援グループのWikiLeaksによると、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は10月10日にロシア軍機の撃墜を計画したという。

 その後、11月17日にロシアの旅客機がシナイ半島で撃墜され、11月24日にロシア軍のSu-24をトルコ軍のF-16が待ち伏せ攻撃で撃ち落としたが、これでロシア軍は引き下がらなかった。即座にミサイル巡洋艦のモスクワをシリアの海岸線近くへ移動させて防空体制を強化、さらに最新の防空システムであるS-400を配備し、戦闘機を増派してシリア北部の制空権を握ってしまった。地中海には潜水艦も配備、対戦車ミサイルTOWに対抗できるロシア製のT-90戦車も増やした。

 ネオコン/シオニストなどアメリカの好戦派は1991年12月にソ連が消滅して以来、自分たちに対してロシア軍は手出しできないと思い込んできた。例えば、アメリカ支配層に近いフォーリン・アフェアーズ誌は2006年3月/4月号でキール・リーバーとダリル・プレスの論文「未来のための変革と再編」を掲載したが、そこでは ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると主張 されていた。その翌年、ニューヨーカー誌でハーシュは、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアはシリアやイラン、そしてレバノンのヒズボラに対するにした秘密工作を始めたと書いている。

 シリアにおける攻撃によってロシア軍の戦闘能力は高いことが明らかになり、「脅せば屈する」という戦術がロシアには通用しないことも明白になった。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュなどの傭兵では太刀打ちできないということだ。

 そうした状況の中、1月22日に アシュトン・カーター国防長官 は陸軍第101空挺師団に所属する1800名をイラクのモスルやシリアのラッカへ派遣すると語り、その翌日にはジョー・バイデン米副大統領が訪問先のトルコで、アメリカとトルコはシリアで続いている戦闘を軍事的に解決する用意があると語っている。

 ところが、手先の地上部隊が予想以上のスピードで敗走、アメリカ政府は戦闘態勢を立て直す時間を稼ぐために停戦の話し合いに乗るが、ワシントン・ポスト紙でさえ、 アレッポを政府軍がおさえたことで戦争自体の決着がついた可能性

 その後、ロシア側の意向、つまりアル・カイダ系武装集団、ダーイッシュ、あるいは国連がテロリストと認定しているグループに対する攻撃は継続することを認めるという条件で停戦した。

 そうした中、サウジアラビアはシリアの侵略軍へ地対空ミサイルを供給する動きを見せる一方でイエメンでの停戦を模索、トルコは相変わらずロシアを挑発、言論統制を強めている。シリア側からトルコを砲撃するという子どもだましの偽旗作戦も実行しているようだ。そうした子どもだましの話を西側の政府やメディアは叫び続けてきた。また「新たな真珠湾」を目論んでいるかもしれない。





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最終更新日  2016.03.09 02:59:03


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