《櫻井ジャーナル》

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2016.03.16
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おしどりマコとケンのブログ

平成23年(2011年=引用者)10月に開始した先行調査(一巡目の検査)においては、震災時福島県にお住まいで概ね18歳以下であった全県民を対象に実施し約30万人が受診、これまでに112人が甲状腺がんの「悪性ないし悪性疑い」と判定、このうち、99人が手術を受け、乳頭がん95人、低分化がん3人、良性結節1人という確定診断が得られている。[平成27年3月31日現在]

 こうした検査結果に関しては、わが国の地域がん登録で把握されている甲状腺がんの罹患統計などから推定される有病数に比べて数十倍のオーダーで多い。


 少なからぬ子どもがリンパ節転移などのために甲状腺の手術を受ける事態になっているのだが、原発事故の影響を否定したい人びとは「過剰診療」を主張。それに対し、手術を行っている福島県立医大の鈴木真一教授は「とらなくても良いものはとっていない」と反論している。原発事故による影響はないという結論を維持するためには甲状腺癌が増えていることを否定しなければならず、そのためには過剰診療を主張するしかないということだろう。

 黒田東彦日銀総裁を「ピーターパン」と揶揄する人が外国にはいる。黒田総裁の打ち出した「量的・質的金融緩和(異次元金融緩和)」が実体経済を好転させないことは明白で、「クレージー」と表現されていた。それに対し、彼は反省するどころか「飛べるかどうか疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」と日銀主催の国際会議で語ったのだ。原発事故でも「被害はない」ということを疑った瞬間に被害が現れるとでも思っているのだろうか?

 患者数の増加はチェルノブイリ原発が事故を起こした後のパターンと似ているのだが、増え方は激しい。事故後に放出された放射性物質の量を考えると、そうしたことは当然。福島第一原発のケースの方が大幅に多かった可能性が高いのだ。

 環境中に放出された放射性物質の総量は、1986年4月26日に起こったチェルノブイリ原発事故の1割程度にすぎない、あるいは約17%に相当すると発表されているが、算出の前提条件に問題があり、元原発技術者のアーニー・ガンダーセンは少なくともチェルノブイリ原発事故で漏洩した量の2〜5倍の放射性物質を福島第一原発は放出したと推測している。(アーニー・ガンダーセン著『福島第一原発』集英社新書)

 放出量を算出する際、漏れた放射背物質は圧力抑制室(トーラス)の水で99%を除去できるとされていたようだが、実際はメルトダウンで格納容器は破壊され、圧力は急上昇してトーラスへ気体と固体の混合物は噴出、そのスピードは爆発的で、水は吹き飛ばされたはずと指摘されている。また燃料棒を溶かすほどの高温になっていたわけで、当然のことながら水は沸騰していたと推測されている。

 いずれにしろ放射性物質を除去できるような状態ではなかったが、そもそも格納容器も破壊されていたようで、環境中へダイレクトに放射性物質は出ていたはず。チェルノブイリ原発事故より放出された放射性物質の量は6倍から10倍に達するとも考えられる。その後も放射性物質は止まらず、大気や太平洋を汚染しているとしか考えられない。

 そうした総放出量の評価はともかく、住民が大量被曝したことは間違いない。原発の周辺の状況を徳田虎雄の息子で衆議院議員だった徳田毅は2011年4月17日、「オフィシャルブログ」(現在は削除されている)で次のように書いている:

 「3月12日の1度目の水素爆発の際、2km離れた双葉町まで破片や小石が飛んできたという。そしてその爆発直後、原発の周辺から病院へ逃れてきた人々の放射線量を調べたところ、十数人の人が10万cpmを超えガイガーカウンターが振り切れていたという。それは衣服や乗用車に付着した放射性物質により二次被曝するほどの高い数値だ。」

 また、事故当時に双葉町の町長だった 井戸川克隆 は、心臓発作で死んだ多くの人を知っていると語っている。セシウムは筋肉に集まるようだが、心臓は筋肉の塊。福島には急死する人が沢山いて、その中には若い人も含まれているとも主張、東電の従業員も死んでいるとしているのだが、そうした話を報道したのは外国のメディアだった。

原発の敷地内で働く労働者の状況 も深刻なようで、相当数の死者が出ているという話が医療関係者から出ている。敷地内で容態が悪化した作業員が現れるとすぐに敷地内から連れ出し、原発事故と無関係と言うようだ。高線量の放射性物質を環境中へ放出し続けている福島第一原発で被曝しながら作業する労働者を確保することは容易でなく、ホームレスを拉致同然に連れてきていることも世界の人びとへ伝えられている。だからこそ、作業員の募集に広域暴力団が介在してくるのだ。

 放射能汚染の人体に対する影響が本格的に現れてくるのは被曝から20年から30年後。チェルノブイリ原発事故の場合は2006年から2016年のあたりからだと見られていたが、その前から深刻な報告されている。

 ロシア科学アカデミー評議員のアレクセイ・V・ヤブロコフたちのグループがまとめた報告書『 チェルノブイリ:大災害の人や環境に対する重大な影響 』によると、1986年から2004年の期間に、事故が原因で死亡、あるいは生まれられなかった胎児は98万5000人に達する。癌や先天異常だけでなく、心臓病の急増や免疫力の低下が報告されている。

 福島第一原発の事故による深刻な影響が早い段階から予想され、実際は予想を上回るペースで現れている。こうした現実を見ようとせず、被害を少しでも減らす努力をすべきだと警鐘を鳴らす人びとを攻撃するマスコミの罪は重い。






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最終更新日  2016.03.17 00:47:27


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