《櫻井ジャーナル》

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2016.03.17
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ロシアは3月15日から戦闘機などを帰還させ始めたが、そうした中、トルコからシリアの北部や北西部で戦っているアル・ヌスラなど侵略部隊への物資輸送が行われ、それを ロシア空軍機が攻撃

 ウラジミル・プーチン露大統領はシリアからロシア軍の主要部隊を撤退させると宣言したが、資金的な援助、武器/兵器の提供、軍事訓練のほか、攻撃能力も維持するとしている。戦闘部隊の規模を縮小するということで、侵略に対する反撃、あるいは今回のような兵站線への攻撃をやめることはないということだろう。日本のマスコミは、シリア政府がロシアの後ろ盾を失うという「希望的観測」を流していたが、正しくない。

 侵略を主導してきたアメリカ/NATO、サウジアラビア/ペルシャ湾岸産油国、イスラエルは今でもバシャール・アル・アサド大統領を排除して傀儡政権を樹立、シリアを分割して支配、あるいはリビアのように破綻国家にしようとしている。アメリカ支配層に服従しない政権は許さないということ。その中でもトルコやサウジアラビアは軍事侵略による体制転覆をあくまでも目指している。

 その好戦的な両国では体制が揺らぎ、シリアにおける和平の実現は自分たちの破滅に結びつきかねない。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン政権は、情報機関が行っていた違法な物資の輸送を摘発したウブラフム・アイドゥン憲兵少将、ハムザ・ジェレポグル憲兵中将、ブルハネトゥン・ジュハングログル憲兵大佐を逮捕させ、言論弾圧はメディア乗っ取りという段階に達している。最近は政権に批判的な学者を言いがかりで逮捕した。すでに末期症状だ。

 サウジアラビアは原油価格の下落による収入の減少で財政が悪化、同国の2014年における財政赤字は390億ドル、15年には980億ドルの赤字へ膨らんだという。状況に変化がなければ、同国の金融資産は5年以内に底をつくと予測されているが、そうなるとドルを支えているペトロダラーの仕組みが崩壊、投機市場も収縮して金融パニックになる可能性があるだろう。ワッハーブ派のカルト国家であるサウジアラビアの現体制が倒れた場合、カルトの信者が民主的な国を作る可能性は小さい。

 原油の相場下落はアメリカとサウジアラビアがロシアを攻撃するために仕掛けたと言われている。WTI原油の場合、2014年6月に1バーレルあたり110ドル近かった価格が年末までに大きく値下がりし、年明け直後に50ドルを切り、今年1月15日には30ドルを割り込んだ。2014年9月11日にアメリカのジョン・ケリー国務長官とサウジアラビアのアブドラ国王が紅海の近くで会談した理由のひとつは相場下落の相談だったと推測されているのだが、ロシアの体制は揺らいでいない。

 サウジアラビアの場合、アメリカのシェール・ガス/オイル業界を破壊することも目的だったと言われ、これは現実になっている。サウジアラビアとアメリカの利害が対立しているということ。1970年代からサウジアラビアはペトロダラーの仕組みを支える柱として機能、ドルを基軸通貨の地位に留める上で重要な役割を果たしてきた。アメリカにとってサウジアラビアはイスラエルと同じように中東/北アフリカの重要な友好国だったわけだが、その関係が揺らぎ始めたように見える。

 イスラエルはシリアを空爆するなど侵略戦争に荷担していたが、現在は一時期のような積極性は見られない。1月19日、INSS(国家安全保障研究所)で開かれた会議の席上、 イランとダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)ならば、ダーイッシュを選ぶと発言 トルコが盗掘石油の購入という形でダーイッシュに資金を提供していると非難 したという。この1週間に状況を大きく変化させる出来事があったのだろうか?

 2月10日になるとヘンリー・キッシンジャーがウラジミル・プーチン大統領と会談するためにロシアを訪問、22日にアメリカ政府とロシア政府は 27日からシリアで停戦することで合意 したと発表した。ロシアの要求通り、アル・カイダ系武装集団、ダーイッシュ、あるいは国連がテロリストと認定しているグループに対する攻撃は継続することが認められている。

 ロシアを訪問しているイスラエルのルーベン・リブリン大統領はシリア情勢について、ロシアが撤退した後にイランやヒズボラの影響力が強まるのではないかと懸念を示したという。実際、 イラン側は特殊部隊や狙撃手をシリアやイラクへ派遣する としている。ネオコンをはじめとするアメリカの好戦派による露骨な世界制覇戦略はロシアと中国を結びつけただけでなく、中東ではイラン、シリア、イラクの関係を緊密にした。





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最終更新日  2016.03.18 02:49:31


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