《櫻井ジャーナル》

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2016.03.21
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 バラク・オバマ米大統領がキューバを訪問したという。勿論、真の友好関係を望んでいるわけではないだろう。オバマを操っているアメリカの支配層は全世界で意に沿わない体制、政権を倒そうとしている。例えば、ユーゴスラビアはアメリカ軍の別働隊とも言えるNATOを使い、アフガニスタンやイラクはアメリカ軍による直接的な軍事侵略で破壊された。最近は2種類の傭兵を侵略に使っている。つまり、アメリカの傭兵会社から戦闘員を雇ったり、 「アル・カイダ」という戦闘員の登録リスト

 アメリカ支配層のラテン・アメリカ支配は1898年から始まる。先住民の殲滅を終えた彼らは南への侵略を目論み、キューバのハバナ港に停泊していたアメリカの軍艦「メイン号」の爆沈を利用してスペインと戦争を開始、植民地を手に入れたわけである。

 スペインが南アメリカを侵略、財宝を奪い、ボリビアのポトシ銀山などを支配し、膨大な量の金や銀をスペインへ持ち帰り始めたのは16世紀。こうして奪った富や十字軍が盗んだ中東/北アフリカの知識がなければ、ヨーロッパの「繁栄」はなかっただろう。資本主義は強奪の上に成り立っている。そうした富の源泉にアメリカの支配層は目をつけたわけだ。

 スペインとの戦争で勝利したアメリカはキューバの「独立」を認めさせ、さらにプエルトリコ、グアム、フィリピンを買収する。この年、ハワイも支配下においた。フィリピンは中国市場へ乗り込む橋頭堡になる。

 その後、1901年9月に暗殺されたウィリアム・マッキンリー大統領を引き継いだセオドア・ルーズベルトはベネズエラへ内政干渉するなど「棍棒外交」を展開した。アメリカ海兵隊の伝説的な軍人、スメドレー・バトラー少将は退役後に戦争を不正なカネ儲け、有り体に言えば押し込み強盗だと表現したが、そうした政策を自らが体験してのことだ。(注2)

 このセオドア・ルーズベルトが日露戦争の「和平会談」で仲介したのはロシア支配を目論んでいたからにほかならない。「明治維新」以降、アングロ・サクソンが日本を侵略の手先に使っていたことは本ブログで何度か指摘した。

 アメリカの支配層はラテン・アメリカを支配するために現地の腐敗勢力と手を組み、富を搾り取り続けてきた。この仕組みを危うくする民主主義をアメリカの支配層が嫌い、海兵隊を送り込んだり、第2次世界大戦後はCIAが秘密工作を実行して民主的に選ばれた政権をクーデターで倒し、独裁体制を樹立させる。

 例えば、アメリカの巨大企業、ユナイテッド・フルーツ(1970年にユナイテッド・ブランズ、84年からチキータ・ブランズに名称を変更)に支配され、「バナナ共和国」と呼ばれていたグアテマラでは、1954年にクーデターでヤコボ・アルベンス・グスマンを排除した。



 現地でクーデターを指揮したのはフランク・ウィズナー、その副官はチャールズ・トレイシー・バーンズ。ふたりともアレン・ダレスの側近で、ダレスと同じようにウォール街の弁護士。つまり巨大資本の代理人。ウィズナーは破壊工作(テロ)を目的とした極秘組織OPCを率いていた。

 グアテマラの国民はクーデターに反発していたのでカウンター・クーデターという方法もあったのだが、軍人が買収されていたため、軍人と武器を扱いなれていない庶民との戦闘になることは明らかだった。元軍人のグスマンは内戦になると多くの庶民が犠牲になることを見通し、1954年6月に大統領官邸を離れるのだが、その判断が正しかったとは言い難い。

 アメリカ支配層を後ろ盾とする独裁体制が成立すると労働組合の結成が禁止され、ユナイテッド・フルーツで組合活動の中心にいた7名の従業員が変死、コミュニストの疑いをかけられた数千名が逮捕され、その多くが拷問を受けたうえで殺害され、その後40年で殺された人の数は25万人に達するという。これがアメリカ流。その後もアメリカ支配層はラテン・アメリカで民主主義の芽を摘み続ける。

 世界を新自由主義で支配する流れの始まりになったクーデターが1973年9月11日に実行されている。1970年の選挙で勝利、大統領になったサルバドール・アジェンデを排除することが目的だった。

 クーデターはCIAの一部が秘密裏に実行したのだが、その黒幕は巨大資本の意向を受けたヘンリー・キッシンジャー。実行部隊を指揮したのはオーグスト・ピノチェト。クーデター政権ではアメリカの巨大資本にとって邪魔な人びとが粛清され、シカゴ大学のミルトン・フリードマン教授の「マネタリズム」に基づく政策を実行していく。その政策を実際に実行したのがいわゆる「シカゴ・ボーイズ」、つまりフリードマン教授やアーノルド・ハーバーガー教授といった経済学者の弟子たちだ。

 こうした人びとは国有企業を私有化を進め、労働者を保護する法律を廃止、労働組合を禁止、そして外国からの投資を促進した。1977年になると軍事独裁政権は組織された反対勢力を一掃することに成功、79年には健康管理から年金、教育まで全てを私有化しようと試みている。こうした政策の中心にいたのが1979から財務大臣を務めたセルジオ・ド・カストロだ。(注3)

 規制緩和でチリの民間部門は外国の金融機関から多額の資金を調達、債務危機の下地が作られていく。1982年にその危機が起こると外国の金融機関は銀行の「国有化」を求めてくる。国有化された彼らの債権は私有化された国有企業の株券と交換され、年金基金、電話会社、石油企業などチリの重要な企業を外国の投資家は格安のコストで支配することになった。(注4)

 1999年にベネズエラの大統領に選ばれたウーゴ・チャベスもアメリカの巨大資本に嫌われていたひとり。 2002年のクーデター計画では、イラン・コントラ事件でも登場するエリオット・エイブラムズ、キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、そして1981年から85年までのホンジュラス駐在大使で、後に国連大使にもなるジョン・ネグロポンテが黒幕 だと言われている。この計画は、事前にOPECの事務局長を務めていたベネズエラ人のアリ・ロドリゲスからチャベスへ知らされたため、失敗に終わった。

WikiLeaksが公表したアメリカの外交文書 によると、2006年にもベネズエラではクーデターが計画されている。「民主的機関」、つまりアメリカの支配システムに組み込まれた機関を強化し、チャベスの政治的な拠点に潜入、チャベス派を分裂させ、アメリカの重要なビジネスを保護し、チャベスを国際的に孤立させるとしている。



2011年12月にチャベスはアメリカ政府が南アメリカの指導者を癌にしているのではないかと発言 している。確かに、癌を誘発する物質やウイルスはあるようで、不可能なことではない。しかも、ここにきて「疑惑の人」が浮上している。チャベスの側近として食べ物やコーヒーなどを運んでいた レムシー・ビリャファニャ・サラサール だ。この人物は後にアメリカへ亡命、保護されている。( 日本語訳

 2009年6月にはホンジュラスでクーデターがあり、マヌエル・セラヤ政権が倒されている。約100名の兵士が大統領官邸を襲撃し、セラヤ大統領を拉致してコスタ・リカへ連れ去ったのだ。このクーデターに少なくとも2名のSOA(注5)卒業生が中枢で活動している。

現地のアメリカ大使館は国務省に対し、クーデターは軍、最高裁、そして国会が仕組んだ陰謀であり、違法で憲法にも違反していると報告 している。つまり、クーデター政権には正当性がないと明言している。この正当性のない政権は翌2010年、最初の半年だけで約3000名を殺害したという報告がある。

 クーデターを支援していたひとり、 ミゲル・ファクセは麻薬取引が富の源泉であることもアメリカ側は認識 していた。ちなみに、ミゲルの甥にあたるカルロス・フロレス・ファクセは1998年から2002年にかけてホンジュラスの大統領だった人物である。

 こうしたことを続けているアメリカの支配層がキューバと友好的な関係を築こうとしているとは思えない。アメリカ支配層が根拠もなく拉致し、拷問、さらに殺害する場所にしているグアンタナモをキューバへ返還することから始めるのが当然だとする意見もある。革命を指揮したフィデル・カストロ、あるいはエルネスト・チェ・ゲバラの息子などはアメリカを信じていないようだが、当然だろう。


(注1)
(注2) Smedley D. Butler, “War Is A Racket”, Round Tabel Press, 1935
(注3) James S. Henry, “The Blood Bankers”, Four Walls Eights Windows, 2003
(注4) James S. Henry, “The Blood Bankers”, Four Walls Eights Windows, 2003
(注5) The School of the Americas。1946年にパナマで創設されて以来、ラテン・アメリカに多くの軍事政権を生み出してきた。この学校では、反乱鎮圧、狙撃訓練、ゲリラ戦、心理戦、情報活動、尋問テクニックなどを教え、卒業生は帰国してから反体制派、つまり巨大企業のカネ儲けに邪魔な人々を迫害、排除するために、拷問、レイプ、暗殺、誘拐、虐殺などを繰り返してきた。1984年にパナマから追い出され、2001年には名称がWHISEC(Western Hemisphere Institute for Security Cooperation)へ変更。





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最終更新日  2016.03.22 12:01:18


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