
これは切ってしまう予定の桃
プラム園のプラムに混じって植えられていた古いタイプの桃
名前も今となっては定かではないらしい。
20本近い桃があって、その中から5本だけを選び私が袋をかけて、育てていますが、これは選ばれなかった桃
『ミーシャ、僕達を見捨てたんだね・・でもね、僕達それでもちゃんとこうして実をつけているんだよ』
『そうだよ、虫に刺されて落ちた妹や、病気になって落ちたおにいちゃんもいたけど、僕はどうにかこうやって実をつけているよ』
『みてみて!綺麗な桃色でしょ?ちゃんと桃でしょ?』
作業小屋へ行くたびに桃の声が聞こえます・・でも、この桃はこのまま落ちて肥料になるだけ
遠い昔、まだ人類が農耕を行わなかったころ、これと同じような野生の桃を見つけた人間はどうしたでしょう?
きっと最初にみつけた人は、恐る恐るこれを齧って、あまりの甘さに驚きまわりを見渡して誰もいないことを確認したのではないでしょうか?
それから毎日その木にやってきて、一人で食べていたことでしょう。
でも、そのうち、誰かにあとをつけられて、ある日その第一発見者が桃の木へたどり着くと、もう他の人が採ってしまってなかったかもしれませんね。
翌年も、この木を知った人間が、早くからこの木のところへやってきて、もしかしたら固いうちに食べていたかもしれません。
木で柔らかくなるまで待っていては、口に入らなかったかも?
農耕が始まる前の桃は、きっと固い桃でしかなかったのではないでしょうか?
そして農耕が始まり、いつしかこの木も増えて、人が栽培するようになって薬を播くから虫が減り、受粉作業をしなくてはいけなくなり、自然の力と関係なく多く実った桃は落とす作業も増え、さらにいつも薬で守られた桃はちょっとの病気にも負けてしまうようになって、袋をかけないと育てられず・・・・
今のようになったのかもしれません。
食べるほうも、昔は自然に実った、ブツブツとソバカスいっぱいの小さな実を喜んでいたのに、いつしか、大きくて傷一つなくどろけるような桃でなくては桃とは言わなくなってしまった・・・
このまさに野生の桃は、私に何か必死に語りかけているように思えます。
僕だって桃なんだ!僕が本当の桃なんだ!と叫んでいるようにも見えます。
同じように野生のようになっている桃が今年は5~6本実りましたが、今まだ実が残っているのはこれだけ・・・あとはすべて肥料になってしまっています。

こちらは選ばれた桃。袋もかけて最後のお薬を7月の末にまいたまま、本当ならもう一度播くようですが、それはせずにどうにか育っています。
5本なんにかけた袋はたった100枚
選び抜かれた100個のうち、残ったのは40個ほど?
早生タイプもなかなか美味しかったけれど、どちらかといえば柔らかめでした。
大きく晩生のこの桃の木はソルダムの間で元気!
『僕はミーシャに選ばれたんだよ』
『わたしもそうよ!!』
『他の姉妹の多くはミーシャが小さい頃に落としちゃったから、ちょっと淋しかったけど、そのこたちがいなくなったお陰で、こんなに大きく成れたんだ』
『これなら出荷できる桃だって園主も言ってくれてたわ』
『でもさあ・・僕達もミーシャが辞めたら切られちゃうね』
『あっちのほら、ミーシャに選ばれなかった桃のように、自然に生き延びることは出来ないのかな?』
『そうね、姉妹いっぱいであの桃は楽しそうよね』
『小さくても大きくて、僕達は桃なんだけどな・・人間のために生まれてきたわけではないんだけどな』
『そうよね、神様が創ってくださった桃色の桃ですもの。それをそのときの流行で作り変える人間って何様なのかしら?』
『ミーシャも固いの柔らかいの煩いこといってるけど、固くても桃は桃、柔らかくても桃は桃なんだよ』
『何も食べるものがなくなれば、袋なんかかけていない小さいソバカス桃だって争って食べるのが人間だよ』
『そうだね、そうなったら僕達も大切にされるね、きっと』

『ほらみて!!袋をかけた桃と、私と何も違わないでしょう?』
(実際は裏側はソバカスです)
袋をかけたり、薬を播かなくても桃色に実った桃たちの姿は、ソルダムが終わったこの農園でひときわ目を引く存在です。
もし桃源卿があるとしたら、袋をかけてもらった立派な桃が成る郷ではなく、こうして放ってあっても桃色に実る小さな果樹が、ここにもあそこにもある・・・そんな場所なのではないでしょうか?
選ばれた桃とそうでない桃と・・・満開の花のときにはどちらも同じ桃の木です。
ソルダムの白い花と桃の桃色の花のコントラストが山を背に広がるこの農園が私は大好き!
来年もまた綺麗な花を見たい・・・
剪定もされず自然な樹形に咲く花とそこに実る小さな果樹は、剪定された桃の木の花や出荷用の桃と変わらず美しい姿です。
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