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2006年06月09日

花よりもなほ

テーマ：映画館で観た映画(8799)

カテゴリ：カテゴリ未分類

『花よりもなほ』　(2006)

「誰も知らない」の是枝裕和監督が、「東京タワー」の岡田准一を主演に迎えて贈る人情時代劇エンターテインメント。父の仇討のため江戸に出てきた若侍が、個性豊かな面々が集う人情溢れる長屋で暮らすうち、様々な経験を積み成長していく姿をユーモアを織り交ぜ描く。共演は「たそがれ清兵衛」の宮沢りえ。　

感想：

シャレのきいた変化球な現代感覚の時代劇でしたね。

「花よりもなほ…」といえば、浅野長矩の辞世の句

「風さそふ花よりもなほ我はまた春の名残をいかにとやせん」。

タイトルがそこから来てるってことは…
”仇討ち”といえばあの集団…が出てくるってことですよ！

これはいろんな角度から感じるトコの多い作品でした。例えば同じサムライ映画「ラストサムライ」。そして”仇討ち”。。
「ラスト･サムライ」の美しい＜散り方＞に涙しました～。武士の精神、日本のこころ、もののふの魂、散る桜の美しさ。。あえて、ひとりのアメリカ人（外国人）の視点から描かれた　日本&武士の潔さ厳しさ。「ラスト･サムライ」が正統派なのに対して「花よりもなほ」でのマゴさん（木村祐一）の言葉は、

「桜は来年も咲くから　潔く散るんじゃないの。」

画像集

＜散り方＞へのこの発想は、庶民ならでは。それも、庶民の中でも底辺の、さらに底辺にいる者の。　武士って、”武士だけが価値ある人間”みたいな価値観の中でしか思考できてないのが現代人からは見える。宗左さん（岡田准一）は、庶民の中の暮らし中から、”武士道”以外にも道がある、桜の＜散り方＞についてひとつだけじゃないことを感じ始める。。

江戸時代の、綱吉将軍の”生類哀れみの令”は評判悪い。あの陳腐さ、うまく出てました。”将軍様は確かに立派で偉い方に違いねーが、やることは、どうも、俺たちの理解を超えているね、こりゃ。。”そんなつぶやきが聞こえてきそう。　表立って犬を虐待などすれば、人間の方が殺されてしまうから、こそっと犬鍋をくっちまおう。。という図には、大いに受けました。

泰平の世の中になっての、行き場の無い武士の宙ぶらりん状態。　戦国の世でこそ、武士は必要な存在であり、存在価値は万人に認められる。けれど天下泰平な世では、生産性は無いし、いばってるだけの無用の長物なワケ。たかが囲碁の勝負ごときで、「せっしゃを馬鹿にするとは　不届き千万　刀を抜きやられよ！～」　ってなことになってしまい、命を落として、残された息子や家族は大きな迷惑をこうむる、。

とはいえ、武士のこうした誇りというものは、まだまだ尊敬、珍重、大事にされていたようで、”赤穂浪士のあだ討ち”というのが、もてはやされたのからも分かります。”生類憐れみの令”などの　幕府からの締め付けによる　庶民のたまった鬱憤のはけ口になった事件ではありますが。

＜武士＞というのは、ほんとに、不思議な精神の日本独特な人種でしたよね。
今ではすでに＜絶滅＞？となりましたけれども。。（絶滅なんて、恐竜のような扱いでスミマセン。）でも、そうした不思議な人種がいたことは　もちろん誇りに思ってます。　現代人の誰か彼かにも先祖に武士がいたのだよね～、と、ふと、ルーツへの郷愁、感動も覚えます。

江戸時代という世界が、いつまでも興味が尽きないのは　”人権”とか”命”とか、、現代とは　大事なもの順番が違う時代で、人々がどんな風に生きていたのか、どんな価値観、感情をもって生きていたのか、やっぱり知りたいと思うからなんですよね。

映画の本筋とはえらく離れてしまった感想ばかり、書いてました。（汗）
だいたい、のほほんと、ゆったりー気分で観れました。
それでも、江戸時代の暮らしぶりなどきめ細やかで、時代考証はバッチリと感じました。

キム兄こと、木村祐一さんは特出してました～。辺見えみりのダンナと知ってなければ、何者だ？というくらいの怪しい演技でした。あの常に半ケツファッション、長屋の肥溜め管理人？　まぁ、ほんと、。あの亡羊とした顔、画面に出るたびに注目しました。

女性の目から見ると、女優陣には注目でした。　江戸に生きる女の、それぞれ違うタイプをみせてくれましたね。自分的には、りえちゃんより、夏川結衣さんに”女の人生”に感慨を覚えました。

ストーリー：

父の仇を討つため信州松本から江戸に出てきた青木宗左衛門は、おんぼろ長屋で実家からの仕送りだけが頼みの貧乏生活を送りつつ、憎き仇、金沢十兵衛の所在を探っていた。仇討ちに成功した暁には、名誉の回復だけでなく藩からの賞金も手に入るはずだ。ところが、この宗左、剣の腕はからっきしで、その不甲斐なさは長屋の住人たちもあきれるほど。刀を差してはいても武芸にとんと疎い宗左は、近所の子どもたちを集めて寺子屋を開く。

大義名分なんぞなくても人は十分生きてゆける。雨露さえ凌げればなんとかなるのだ。そんな庶民のしたたかさが、生活臭たっぷりの長屋ライフと共に描かれる。売られた喧嘩を買わない術や、仕返しをしない生き方だってあることを謳うこの異色時代劇は、『誰も知らない』の是枝裕和監督のオリジナル。天下泰平な世にあって武士なんて何も生み出さない役立たずと罵倒され、「色男金と力はなかりけり」を地で行く宗左衛門は反論できない。この軟弱な主人公を演じるよれよれの岡田准一に色気がある。美貌の未亡人から、無邪気な子ども、泥だらけの長屋の男たち、果ては雪の道を静かに進む浪士の脚まで、膝下のショットでキャラクターを描き分ける手法も秀逸。

製作：久松猛朗
プロデューサー：佐藤志保
榎望
企画：安田匡裕
原案：是枝裕和
脚本：是枝裕和
撮影：山崎裕
美術：磯見俊裕
馬場正男
衣裳：黒澤和子
編集：是枝裕和
音楽：タブラトゥーラ
ラインプロデューサー：田口聖
照明：石田健司
録音：弘巻裕
助監督：板庇竜彦

出演：岡田准一青木宗左衛門
宮沢りえおさえ
古田新太貞四郎
浅野忠信金沢十兵衛
香川照之平野次郎左衛門
國村隼伊勢勘
原田芳雄小野寺十内
中村嘉葎雄重八
田畑智子おのぶ
夏川結衣おりょう
石橋蓮司青木庄三郎
上島竜兵乙吉
木村祐一孫三郎
千原靖史留吉
加瀬亮そで吉
平泉成善蔵
絵沢萠子お勝
寺島進寺坂吉右衛門

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