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2010年01月31日
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このミステリーがすごい  2009年版 国内編 第3位

【このミステリーがすごい より】

不可能犯罪をたくみにからめた恋愛ミステリー

牧薩次・・・。この名前を見てニヤリとするミステリーマニアは大勢いるに違いない。そう、読者を犯人に設定するという離れ業に挑んだ、ジュブナイル・ミステリー『仮題・中学校殺人事件』で本格的なデビューを飾った辻真先。その作品に多く登場する探偵コンビ、牧薩次・可能キリコの一人であることは言うまでもないだろう。
「薩次と僕は二重胎児なのです。心臓部に刻まれたミステリの赤い瘢痕が、二人の共通項なのでありましょうか。」と後書きにあるように、自らの分身の名を使うという稚気+α(その本当の意味は読後に判明する)を実践したのが本作である。
会津の山奥にある刀掛温泉に住む叔父の元に疎開した本庄究(ほんじょうきわむ)は、離れに疎開中の有名画家・小仏画伯の娘、朋音と知り合い恋心を抱く。終戦になり村にやってきた進駐軍将校が殺される事件が起きる。究は容疑がかかった朋音をかばい、ある夜忍んで来た女性と一度きりの契りを結ぶ。
究は小仏画伯の弟子となり、徐々に画壇で頭角を現していく。一方資産家と結婚した朋音は一人娘の火奈を産むが昭和三十七年に死亡してしまう。究は悲嘆にくれるが、自分の娘であると確信している火奈の成長を心の支えにしていた。だが昭和四十三年、究の目の前で悲劇が起きる。戦時中から昭和末期にかけて、心に純愛を秘めて生き続けてきた男の生涯と、彼が遭遇した三つの不可能犯罪をたくみにからめた恋愛ミステリーである。信州と沖縄の間を凶器が瞬間移動する二つ目の事件の豪快さはトリックの名手の面目躍如だ。さらに恋愛小説の中に埋め込まれていた伏線が過不足なく回収された瞬間、それまで陳腐に見えたトリックがまったく違った光芒を放ち始めるのだ。さらに何作かの前例があるとはいえ、ある昭和の大事件も作品中に取り入れてしまう趣向も見逃せない。全く衰えを見せないミステリー界の長老が放つ、渾身の傑作である。


【感想】



敗戦から現代までの日本と主人公らの動向があいまり、年代記風な所が自分好みでした。
主人公の究(きわむ)は、空襲で家族を失っても、親戚の家で頭脳優秀で性格も良さげ。
周囲の人にも気に入られて田舎に溶け込んでます。
そんな彼が人生イロイロで、やがて終焉をむかえるのですが、、。

彼が愛する女性の朋音は、娘・火菜、孫:友絵と、生まれ変ったかのように、彼の前に立ち現われますね。
完全恋愛という題名の意味がラストで分かりますが、。


それにしても、こんな風に勘違いしたままで、満足して死んで良いのですか?とか、
見送る側も心残りないのかですか?とか、思ってしまいました。じぶんが女だからですかね。
でも、今にも、息を引き取ります。という瞬間に真実を告げられても、
「え!今いわれても!」ってことになるわけで。。
傍から見れば自己満足にしか見えなくても、自分の核ともいえる大切な部分は壊されたくないもんです。穏やかに旅立つ場面を見送るしかないのかも?。







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最終更新日  2010年01月31日 23時26分37秒


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